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【リズと青い鳥】傘木希美を考える

※ こちらの記事では映画「リズと青い鳥」とTVアニメ「響け!ユーフォニアム 2

のネタバレを含みます。 

 

先日、「リズと青い鳥」を鑑賞しました。素晴らしい映画を観た、の一言に尽きます。 

静かで、洗練された映画でした。空間やものや、あらゆる音が極限まで削ぎ落とされており、厳選された情報が鮮やかに伝わってきます。環境音、衣擦れ、靴音、呼吸音。一つ一つに少女たちの感情が凝縮されており、濃厚な時間を味わうことができました。

呼吸が止まりそうなほど綺麗で、呼吸するのも煩わしくなるほど静謐。そんな特別な映像を体験するという目的だけでも、多くの人に劇場へと足を運んでもらいたい、そう心から思います。

 

さて、この記事ではそんな「リズと青い鳥」にて描かれた一人の登場人物、傘木希美のお話をしていきます。

私はこの映画を観ながら彼女の言動に、一挙手一投足に、とても強く興味をひかれました。本作では少女たちの言葉にならない感情が数多く描かれていましたが、傘木希美のそれは特に、複雑で難解であるように感じました。言葉通りに、受け取ってしまっては容易く意味を取り違えてしまいそう。

映画の中の各シーンを振り返り、それぞれの描写の意味や印象を一つ一つ整理しながら、傘木希美の感情を考えていきたいと思います。 

 

 

傘木希美への違和感

性格は明るく親しみやすく、多くの後輩に慕われていて、リーダーシップもあって、演奏もとてもお上手。それが傘木希美に対し、最初にいだいていた印象でした。

しかし、映画を観進めていくと、彼女の内面はそう単純ではないことがわかります。意外にも軽薄で不誠実な面がある模様。この項目ではまず、そのようなことを話していきます。

  

取り上げたいのは映画の中盤に差し掛かった辺り、「私、ここの大学、受けようかな」のシーン。希美とみぞれが進学先を音大にするかどうか、というような会話する場面です。

希美が音大のパンフレットを見ながら「私、ここの大学、受けようかな」と言い出し、それを聞いたみぞれが「じゃあ私も!」と、音大への進学に意欲的な様子を見せるようになるのですが……

ここで違和感を覚えるのは、希美の態度。この時のみぞれは誰が見てもわかるくらい希美への依存心丸出しで進路を選択しているのですが、それについて希美が一切口出しをしないのです。 

ふつう、健全な友人関係ならば、進路は自分の意思で考えて決めるべきだと軽く諭すのが自然ではないかと思います。確かに他人の進路にそう口を出していいものではないのですが、それにしても少しは

この会話の後のシーンで、吉川優子がみぞれの選択や希美の態度を気にかけて、心配の言葉をなげかけます。これがやはり、友人として適切で誠実な対応であるように思います。そしてそうしなかった希美は、やはり不誠実であったように見えました。

 

思い返せば、TVシリーズ2期「響け!ユーフォニアム 2」の4話においても似たような匂いを感じました。希美は高校一年生の時、諸々の事情で吹奏楽部を退部した際、みぞれに何も告げませんでした。そのことにみぞれは大層ショックを受けてしまい、それがやがてややこしい問題へと発展したのが、2期序盤のストーリーです。

希美が声をかけなかった理由としては、「頑張ってるみぞれに対して一緒に辞めようとはとても言えなかった」「オーボエパートは当時一人しかいなかった」などがあったらしいのですが……しかし、希美はみぞれと中学時代に「高校行ったら金取ろう」と誓い合っていました。従って、部活を辞めるのならばせめて一言くらいあやまっておくのが筋です。そうしないどころか、何も告げずに辞めた件について全く悪びれてもいない態度だったのは、もはや軽薄とすら呼べるものだったと思います。(この時も吉川優子さんは希美にめっちゃ怒ってた。本当に良い子や)

 

 

 傘木希美の鎧塚みぞれに対する感情

明るくさっぱりしていたり、不誠実な行動を取っていたり、希美の内面は思った以上に複雑であることがわかりました。彼女を解きほぐすべく、続いては映画の中で示された傘木希美の感情の読み取りを行っていきます。

 

・みぞれが音大のパンフレットをもらったことを知った時

このタイミングで、希美の表情はそれまで見たことないほど劇的に曇っていました。ここに示されているいるのはやはり、「劣等感」や「嫉妬心」でしょう。新山先生がパンフレットを渡した、音大へとスカウトしたのはみぞれだけで、希美には声がかかっていなかったから。

希美の演奏も決して下手ではなく、むしろ上手い方であったのですが、みぞれのそれは超越したものであるように描写されていました。中学時代からずっと木管パートとしてみぞれの隣で演奏していた希美だから、劣等感などを抱えていても不思議ではありません。

また、技術だけでなくみぞれを取り巻く環境にも嫉妬を覚える要素があります。みぞれは高校一年生の頃から、自分の他にオーボエ奏者がいなかったこともあり、コンクールに出場することが出来ています。対する希美はコンクールに出られないどころか、同じフルートパートの先輩と衝突し、一度退部するにまで至っています。みぞれの境遇を羨ましく、妬ましく思ってもおかしくありません。

前項で一年の頃退部時にみぞれに声をかけなかったのは酷いと書きましたが、これらの感情があったためと考えると一応納得がいきます。酷いことには変わりませんが。

 

そういえば作中楽曲「リズと青い鳥」第三楽章をコンクールで吹けることに、希美は嬉しそうな様子を見せていました。この楽曲はフルートとオーボエソロの掛け合いが主役でありましたから、みぞれと並び立てることに、希美は喜びを覚えていたのかもしれません。(そう思うとクライマックスの演奏って本当……

 

・「私、ここの大学、受けようかな」

この台詞を吐いた時の希美の中にあるのはきっと、劣等感と嫉妬心に基づいた競争心でしょう。しかし、次の瞬間からは、また違った感情が湧いていたと推測します。

希美が「私、ここの大学、受けようかな」と口にするや否や、みぞれが追従するように「じゃあ、私も!」と言い放ちます。ここで希美の中には、おそらく次のような気持ちが生まれていたのではないでしょうか。

まず純粋に、自分をここまで慕ってくれる存在を愛らしく思う気持ち。そして、劣等感を抱いていた相手が自分に追従して行動を取ることへの心地よい感情。いわゆる「独占欲」や「優越感」があったのではかと思います。

 

このシーンを境にしばらく、希美はみぞれに対して妙にベタベタと親しげに絡んでいくようになります。お祭りやプールに積極的に誘ったり。これが少し不気味です。だってここまで二人の仲が進展するような描写はなかったから。 

序盤の方にあった剣崎梨々花と希美の会話の中で、希美はみぞれのことを仲が良い相手だと断言できていませんでした。少なくとも希美からみぞれに対する感情は、そこまで親密なものではなかったのがわかります。

にも関わらずこのように親しい様子になっているということは、直近の「私、ここの大学、受けようかな」のやり取りの中で、みぞれに対して心地よい気持ちが生まれるような、心情の変化があったと考えられます。

それが何かと考えるとやはり、「優越感」「独占欲」が生まれたということなのでしょう。本当にこの子は純粋に私のことを好いてるんだな、可愛いな、と思う気持ちや。凄いな、妬ましいな、と思っていた相手が自分に追従する優越感。今まで羨ましくて仕方なかった相手を、コントロールできていることへの背徳的な喜び

 

・「他に誘いたい子がいるんだけど」

希美がみぞれに対してプールに行こうと誘った時の、みぞれのこの返答。後輩の子も誘いたいという返事に、希美は目を大きく見開いて、ショックを受けていました。

みぞれは自分だけを好いていてくれると思っていたから。もしくは自分以外とは仲良く出来ないと思っていたから。みぞれが自分だけに追従してくれることに心地よさを覚えていたから、それが幻だと気づいてこのショックを覚えたのでしょう。

みぞれが中川夏紀・吉川優子に「希美が受けるから私も音大に行く」と告げた時、希美は「みぞれのジョークじゃん」とそれを笑い飛ばしました。しかし、ここまでの希美が優越感を覚えていたかのような描写が揃っていることを考慮すると、本当にジョークだと思っていたとは考えにくいです。きっとここで希美は嘘を付いています。 

希美を考えれば考えるほど、彼女の嘘つきで、薄っぺらで、いい加減な面が透けて見えてきて、だんだん苦しくなってきます。

 

 

傘木希美と鎧塚みぞれの境遇の差

思えば、「リズと青い鳥」にてみぞれの視点で綴られた物語は、随分と優しかったのではないかと思います。

まず、みぞれにはたくさんの味方が居ました。みぞれの境遇をずっと心配してそばに居てくれた吉川優子や、同じクラスで何かと面倒をみてくれる中川夏妃や、純粋に慕い続けてくれる後輩の剣崎梨々花。もしみぞれの心がグラついたら、すぐにそれを察知して助けに来てくれそうな友人ばかりです。 

さらにみぞれは音楽に関する優れた才能を持っています。先生から音大への進学を進められるほどの実力者です。みぞれは才能や、人や、環境に恵まれているのでした。

そして何より、みぞれの感情の性質は、どこか前向きです。作中、青い鳥を逃がすリズの気持ちがわからないと悩んでいましたが、その根源にある気持ちだって、曲を上手に演奏したいというものでした。 

みぞれは「希美が私のすべて」と言い切っていましたが、それはたぶん、希美がいないと何もできないという意味ではありません。なぜなら彼女は希美が居ないところでも自然に笑えているから。吉川優子や、剣崎梨々花の前でも笑っている。関西大会への出場が決まった時にも笑っている。希美のことが意識の外にあったであろう時に、彼女は心からの笑顔を浮かべられていました。

希美が大切で大好きという気持ちや、感謝の気持ちがあるのは真実ですが、それはやはり陽性な、前向きなものでした。

 

しかし、希美はそうじゃありません。彼女の視点だと物語は随分過酷です。

まず、彼女は明るいだけでなく、薄暗い感情も抱えています。後ろめたくて、人には言えないような、軽蔑されるような気持ちを持っています。それに基づいて、みぞれに対して不誠実な行動も取ってしまっています。 そしてそれらの感情と向き合うことすらできていない。希美が自身の後ろむきな感情に耐えられず折れてしまった時、それを適切に理解してくれる人は周りにいません。多くの登場人物は希美を、いつも明るくてさっぱりした陽気な先輩だと思っています。(みぞれが理解していたかどうかは、ラストシーンの解釈の仕方によるのだろうと思います。)

 

リズと青い鳥」の物語において、みぞれは、青い鳥を逃すリズの気持ちを理解することはできませんでしたが、リズの思いを受けとって羽ばたく青い鳥の気持ちになることはできました。だけど希美は結局、リズにも青い鳥にもなることはできませんでした。

みぞれの葛藤は解決しましたが、希美は不安定と不誠実な面を示されるばかりで、それらにスッキリした解決はあたえられません。「リズと青い鳥」は希美にとって、だいぶ辛いお話でした…最終的には希美も前向きな表情になれましたが、それでも…

 

 

傘木希美の背景

ここまで傘木希美のことを不誠実だなんだと書いてきましたが彼女がそうなってしまった理由についても、彼女が経験した高1、高2の出来事を振り返るとなんとなく察せるような気がします。

 

まず、中学時代の傘木希美は概ね順風満帆でした。吹奏楽部の部長として多くの人々から慕われ、真面目に努力をし、良い音楽を奏でていました。中学最後のコンクールでは苦い思いをしつつも、その気持ちを胸に高校では頑張ろうと前向きでした。

 ところが、高校に進学してみればそこにあったのは不真面目でやる気のない吹奏楽部。コンクールで良い結果を出そうとしている生徒は一人もいないという状況。希美の望むような環境ではありませんでした。

希美はめげずにその雰囲気を変えようと努力をしたわけですが…その行動が煙たがられ、部内で爪はじきものにされてしまい、最終的に彼女は吹奏楽部を退部するに至ります。 

さらに悲惨なことに、希美が退部した翌年、北宇治高校吹奏楽部は全国を本気で目指す情熱ある集団へと生まれ変わります。それは希美が切望していた環境であり、結果として希美は、頑張ったからこそ自分の望むものを失ってしまったということになります。

 

この時の彼女の気持ちがどうだったのか、考えるだけで胸が苦しくなります。頑張ったけど上手く行かなくて、それどころか頑張りさえしなければ望む結果が手に入れられていたという…

こんなことがあってはもう、これからどう頑張ったらいいのかわからなくなるのが自然です。だから希美はこのような薄っぺらい人間になっちゃったのかなぁと。漠然と思います。

リズと青い鳥」作中の練習風景なんかを見ても感じます。希美の練習に臨む様子ですが、しばしばパート練習中なんかで後輩たちとおしゃべりしているところが目立ちました。希美が復帰を果たした今の吹奏楽部は、真面目に全国を目指す集団で、切望したコンクールにも出場することが出来るというのに。それが手に入った今、希美はかつてのような熱血の頑張りを見せていません。きっと出来なくなったんだろうなぁ

傘木希美は輝かしい時代から落ちぶれてくすんでしまった、悲しいキャラクターなのだと思います…

 

 

おわりに 

リズと青い鳥」を観て、傘木希美に対して思ったことを、一通りはき散らかしてみました。記事にしてみて再認識したのは、傘木希美は想像以上にしんどくて、難解で、魅力的なキャラクターであるということでした。

映画の中野希美の描写については明確な説明があったわけではないので、これらは推測にすぎません。でもこうしてまとめると少し理解が深まったように思うので、整理してみて良かったです。

見れば見るほど新しい気づきの得られる映画なので、公開期間中に出来るだけ多く観に行きたいなと思います。 

 

 

終わり

 

【アイカツスターズ!】エルザ フォルテ パーフェクトへと至る道

 アイカツスターズ!2ndシーズンの感想・考察記事になります。

 

 2017年春からスタートしたアイカツスターズ!2ndシーズン。早いものでもう始まってから8ヶ月以上の月日が経ち、だいぶクライマックスの雰囲気が漂ってきました。星のツバサも全部そろって、太陽のドレスというすごいドレスも出現して。決勝トーナメントなる最後の舞台の影も見えつつあり、それぞれのアイドルが準備を整えている状況です。

 ゆめ達はS4としての貫禄をつけ始め、きららやレイといったヴィーナスアークの面々も自身のアイカツの道を見つけることができて。失敗したことや大変なこともあったけれど、今はほとんど全員が安定し、心満たされるアイカツの日々を送っています。

 そんな中、ひとり未だに不安定で。今にも崩れそうなくらい危うい空気を放っているキャラクターがおります。そうです、エルザ フォルテ。彼女です。

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 第86話「涙の数だけ」を見て以降、彼女のことを考えるだけでしんどい気持ちに包まれます。本記事ではそんなエルザの話を、アイカツスターズ!2ndシーズンを振り返りながら語っていこうと思います。彼女がどのようなキャラクターだったのか、彼女を見てなにを感じたか。そのようなことについて。

 

エルザの第一印象 

 先ず、エルザがどんな人だったのか、簡単におさらいしていきます。 

 エルザ フォルテ。第51話「パーフェクトアイドル エルザ」より登場した、豪華客船型アイドル学園「ヴィーナスアーク」のオーナー兼アイドル。すべての物事において完璧であることをモットーとしている、自他共に認めるパーフェクトアイドル。

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 完璧へのこだわりが強すぎるあまり弱者を顧みない言動が目立ち、初期は悪役のような印象のある人でした。「アイドル海賊」なんていう異名もついており、その強烈さからローラや真昼の反感を買うこともしばしば。

 しかし、そのような態度はあくまで誰よりも完璧なアイカツを追求したいという信念によるものであり。強烈ではあるけれど決して悪人ではなく、純粋に志の強い人という感じでした。自らを慕うものに対しては厳しくもあたたかみのある態度で接し、ヴィーナスアークでは多くの生徒達に尊敬されています。

 たまに酷いことも言うけど、アイカツに対する真摯な姿勢と確かな実力は心から尊敬できる人。ゆめ達とは決して仲良しこよしにはならず、気高いライバルのようなポジションで、時に競うようにアイカツを共にしておりました。

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 初登場時のセリフがこれ。いや本当に強烈な人でしたね。

 

エルザの根幹

 そんなエルザの精神の深いところが分かるのが、第78話「ようこそ パーフェクトマザー!」。エルザが完璧を追求する真の理由が、彼女の本質を見ることができた回です。 

 エルザには愛する母がおります。母の名は、ユキエ グレース フォルテ。母はエルザを、エルザは母をお互い家族として大切に想い合っており、二人はおおむね良好な関係にありました。

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 しかし母は多忙な人で、幼いエルザは寂しかったのか、より大きな愛情を求めるようになります。母ともっと一緒に過ごしたい、優しく抱きしめてもらいたい、そんな願望を抱きました。

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 そしてエルザは、その望みを叶えるための手段を考えました。母に抱きしめてもらうためには、もっと母に愛される自分にならなければならない。母はパーフェクトなひとだったから、きっとパーフェクトなものが好きに違いない。だから私がパーフェクトになった日には、私をもっと好きになってくれる。そうすればきっと、私を抱きしめてくれると。

 こうしてエルザは幼い頃に、完璧であることを志すようになりました。そう、エルザが完璧を追求する真の目的、それは「愛する母に抱きしめてもらいたいから」。母に対する思慕が、幼き日にいだいた志が、現在のエルザの根幹になっているのですね。

 

 この回まで、エルザはただ純粋に完璧な立ち居振る舞いそのものに喜び、パーフェクトアイドルの地位に立つことで心満たされているように見えていました。だから、本当に驚きです。

 実は、彼女にとって完璧であることは目的を叶えるための手段でしかなくて、しかもその目的は母から愛されたいという子供らしい欲求だったと。エルザの本質がわかる、エルザの見方が変わる非常に印象深い回でした。

 

エルザと母の切ないすれ違い

 さてここで一つ、エルザに対してしんどい気持ちが湧いてきます。エルザは母に抱きしめてもらいたいという目的を叶えるべく、パーフェクトになるという手段を選びとりました。しかし実際のところ、母はエルザのことを最初から深く愛していました。なのでエルザが完璧にならずとも、言えばきっと母は抱きしめてくれました。つまりエルザは、夢叶えるためなら完璧にならずとも良かったのです。

 いや、それどころか。完璧を目指すという手段を選んだからこそ、かえって抱きしめてもらいにくくなった節すらありました。それを感じられるのが、第78話におけるエルザと母ユキエの会話シーン。

「この後、”ゲストの皆様のため”に、私がステージを披露します」

「ええ、私も楽しみよ。」

(子供のように笑うエルザ)

「それでは、また後ほど」

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 このやり取りの直後に、母は急な用事が入ってしまい、エルザのステージを見ることなく会場を後にしてしまうのです。エルザが本当は誰に見てもらいたかったのか、エルザの表情から容易に読み取れたため、とても切ない気持ちにさせられるシーンでした。

 きっと、母はエルザの言葉に安心したのだと思います。ゲストのために、みんなのためにステージを見せると言う、娘のパーフェクトな言葉に。大人になった、立派になった姿を見て、きっとエルザは一人でもやり遂げるだろうと思い、会場から離れたのでしょう。

 この一連の描写が、エルザが完璧に振舞おうとしたからこそ母が離れていったという構図になっていて、なんとも悲しい。完璧を目指すということは、立派な大人へとなるということで。母に抱きしめてもらいたいというのは、すこし子供っぽい欲求で。エルザが完璧を実行すればするほど、母の抱擁は遠ざかっていくのです。切ないね。

 そして、母が離れれば離れるほど、エルザは「まだ自分が完璧じゃなかったから」と自身のパフォーマンスを顧みます、より完璧なものへと洗練させます。そして、また一つパーフェクトなレディーへと成長し、また一つ母を安心させて、また、一つ……

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だんだんと間違えるエルザ

 母に抱きしめてもらうという目的を叶えるために、完璧を目指すという手段を選んだエルザ。遠い抱擁を得るために、何年も何年も完璧へと至る努力をひた向きに続けていきました。そして彼女はだんだんと、道を間違えていくことになります。

 

 アイカツスターズ!2シーズンでは、キーアイテムとして「太陽のドレス」なる伝説のドレスが登場します。太陽のドレスとは、作中においてパーフェクトなアイドルのみが手に入れられるという、とにかくすごいドレスです。

 これはエルザにとってパーフェクトの象徴とも言えるもので、なんとしても手に入れたいと強く願っていました。物語の中で、エルザがこの太陽のドレスとの距離が近づいたあたりから、彼女の瞳は曇っていきます。

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 上の項でも述べましたが、エルザは自らを慕う者たちとは暖かみのあるコミュニケーションをとっていました。そこが彼女の良いところ、魅力的なところでもあったのですが。目を曇らせたエルザは、まずそこから変わっていきます。

 

 かつてのエルザは、特に花園きららに対して特別優しく接しているように見えました。きららは特別エルザのことが大好きだと慕っていて、エルザを喜ばせたいという一心でアイカツに励んでいると豪語する子です。

 エルザ自身、母に愛されたいために完璧を志す努力をしている人間だから。誰かへの大好きで頑張るきららの気持ちが良くわかったのかもしれません。きららには特別優しく、時にあたたかい抱擁を与えていました。

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 こういうところでエルザの繊細さが感じられて、好ましかったですね。

 しかし太陽のドレスの件で、エルザは自分のことでいっぱいいっぱいになり、きららに優しくできなくなっていきました。エルザが急に冷たくなったように感じたきららは、ひどく傷つきます。このようにエルザは、かつて出来ていた繊細な心遣いを忘れるようになってしまいました。

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 これがまた、悲しい話ですね。エルザの母は、エルザが完璧であろうとなかろうと大切に思っていました。しかし、このように自分を慕う身近なものまで思いやれない子にエルザがなってしまうのは、きっと嬉しくなかったと思います。

 エルザは母に愛されたいと願って完璧を志したのに、その完璧の象徴を手に入れる過程で、母に喜ばれない人間になってしまったのは、酷く悲しいことです。

 

 

至ってしまった太陽のドレス

 何かを間違えたまま、そのままエルザは念願の太陽のドレスを手に入れます。夢が叶ってエルザ本人は大歓喜。しかし見ているこちらはジリジリと、悪い予感が止まりません。

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 エルザが太陽のドレスを手に入れた、第86話「涙の数だけ」のステージ。太陽のドレスをまとうエルザのパフォーマンスは鳥肌が立つほど美しかったけれど、どこか物悲しさがありました。まさに太陽のごとき眩い魅力があったけれど、他のアイドル達のステージを全て呑み込むような、エルザ本人すらも惑わすような、底知れない怖さがありました。

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 無意識に思い返すのは、第78話での母ユキエの言葉です。

「まぶしい世界にいると、時々見えなくなってしまうでしょう?」

「はじめに目指したはずの、理想や夢。星の輝きが。」

「本日は特別にお願いして、少しの時間だけ。本当の闇をご用意しました。」

「自分の夢や、理想の星を、もう一度、ゆっくりと思い出してくださいね。」

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 周囲の光をひと時消すことで、隠れていた数多の星の輝きを見せた母ユキエ。強大な太陽のドレスの輝きで、他のアイドルたちの光を丸呑みにしようとしたエルザ。

 誰か一番の輝きよりも、一つ一つの個性豊かな煌めきの美しさを大切にする母ユキエ。自分が一番に輝くことしか考えられず、周囲への思いやりを忘れたエルザ。エルザがさらに母とのすれ違いを深めたように思えて、また悲しくなります。

 

ひどく悲しいこと

 もともと、エルザの目的は母から抱きしめられることで、太陽のドレスそのものではなかったはずです。太陽のドレスはあくまで完璧な自分に至るための手段でした。しかし有頂天な今のエルザはまるで、もう目的が達成されたかのような様子。目的と手段を履き違えてしまいました。

 母は、完璧じゃなくてもエルザを愛しています。最初から完璧じゃなくても良かったのです。しかしエルザは幼い思い違いから、完璧を志して。その過程で道を誤り、母に望まれない変化を遂げてしまいました。

 エルザはこれからきっと、この事実と嫌でも直面することになります。信じて突き進んできたパーフェクトになるという道が、母の愛へと至るには正しくない道だと悟った時。彼女はどれだけ大きな絶望を味わってしまうのでしょうか。

 

 考えるだけで胸が痛くなります。そうなった時のエルザのことを想像すると、可哀想で仕方ない。

 エルザが完璧になりたいと願ったのは、母の愛する自分になりたかったから。母を喜ばせたかったからだという、善性の感情が元になっていました。そしてそれに当たって選択したのが、完璧に、立派になるという善い行動です。そのような気高く清らかな人格を持っていた幼いエルザが、こんなにも惨い、大きな悲しみに至ってしまうのはあんまりです。

 母に愛されたいからといって問題行動を起こしたりすることもなく、ひたすら立派に努力した幼子にこのような仕打ちが待ち受けているのは、ひどく残酷なことです。しんどいね……

 

孤独なエルザ

 そしてさらに、なにより一番悲しいのは。エルザが随分と孤独であるということです。エルザが真に求めているのは母の愛情なのですが、そのことをあの世界の誰もが知らないのです。知っているのは視聴者だけ。あの世界の人たちは皆々、エルザはただただパーフェクトなアイカツに心満たされているのだと認識しています。

 折れそうなくらい大きな悲しさを味わった時、慰めてもらったり、寄りかかったりしながら、どうにか人は立ち直ります。しかし今のエルザはそれが叶いません。完璧であり続けるために、誰にも幼い本心を漏らすことはなかったから。

 悲しみを誰にも理解してもらえないのは、とても辛い。エルザはこれから折れることになっても、そこから一人で立ち向かわなければならないのです。一人っきりで戦わなければならない。 心苦しいですね……

 

 どうにかならないのでしょうか。一人だけ、エルザを一番側で見ていた騎咲レイだけは、悲しい方向へと歩を進めているエルザに気づいてる様子でした。どうにか彼女が助けてあげる流れにならないものでしょうか。エルザに寄り添える可能性を持っているのは、もうレイだけしかいないような気がします。

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パーフェクトアイドル エルザ 

 これからエルザは、きっと傷つくことになります。それはもう当人以外には計り知れない、辛い絶望なのだろうと思います。そのような展開が約束されているのかもしれないません。ですが私は、どうにかエルザに、それを乗り越えていってほしいなと思いました。

 

 エルザが目指したパーフェクトとは母の愛を受け取る手段に過ぎず、間違いだらけではあったけれど。それでもエルザのパーフェクトであろうとする立ち居振る舞いは、確かな素晴らしいものが宿っていました。そうだったからこそ、それに惹かれてエルザの元へと多くの生徒が集ったのです。

 エルザがいなかったら小春はゆめと共にブランドを立ち上げることもなかった。エルザを大好きにならなければ、きららは今の満たされたアイカツに至れなかった。エルザに尽くす喜びを知ることがなければ、レイは退屈で情熱のない人生を送っていた。エルザはたくさんのアイドルに、世界中の人々に、価値あるものを振りまいていました。

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 エルザはこれから悲しみに至った時、自分の人生は間違いだらけだったと思ってしまうかもしれない。だけどその間違った道のなかでも、正しくて豊かなものを与えてまわっていたのです。虚像を追いかけた道のりの中で、育んだものは本物だったのです。

 

 完璧であることはエルザの人生に良くない影響も与えたし、完璧を目指しさえしなければ、彼女はもっと心満たす道を歩めたかもしれない。それは真実だと思います。

 しかし彼女が完璧を目指そうとしたきっかけは善い心根だったし、選んだ行動は立派で正しかったし、完璧であろうと信念を貫く彼女は美しく格好良かった。それもまた真実なのです。

 

 ここでアイカツスターズ!2ndシーズン後期OP「MUSIC of DREAM!!!」の2番以降の歌詞を聴くと、深く心に沁みます。少し未来のエルザはこうであってほしい。いつか、完璧になると約束した幼き日の自分に、胸を張れるようにエルザらしくあってほしい。信じた道を歩んでいってほしい。

 

 間違いは間違い。正しいものは正しい。それらを分別した上で、彼女には真のパーフェクトアイドルに至ってくれればいいなと、切実に思います。彼女自身が満たされる答えを見つけたその先で、愛する母に抱きしめてもらえるといいですね。頑張れ、エルザ フォルテ。

 

 

終わり

【アイカツスターズ!】ふたりの夢が重なるまで 〜第72話 感想・考察〜

アイカツスターズ!第72話の感想・考察記事になります。

 

アイカツスターズ!第72話、本当に素晴らしい回でした……

虹野ゆめと七倉小春。半年以上に及んだお別れ期間を経て、再び道を共にした幼馴染のふたり。小春がゆめのブランド ベリーパルフェにデザイナーとして携わるまでを描いたお話として、これ以上ないほど上質なものが示されたように思います。

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今回、私が心から凄いなと思ったのは、小春がゆめの夢に介入することの困難を、真摯に描ききっていたこと。そしてその困難に対する回答が大変見事だったことです。小春には、ゆめちゃんの夢に介入することへの恐れの自覚、およびそれを乗り越えるまでの物語が。そしてゆめには、彼女の成長・心根の強さを表す描写が用意されていました。この記事ではそんな第72話から得た感動を、感想考察賞賛交えながら語っていきます。

 

七倉小春が向き合ったもの

第72話ではまず、小春がゆめちゃんの夢に介入することへの恐れや不安を、彼女自身に認識させる流れがしっかり作られていました。

第72話冒頭にて、小春はゆめちゃんの力になることに胸をときめかせています。自身がベリーパルフェのデザインに携わることで、ゆめちゃんは絶対喜ぶに違いないと、信じて疑っておりませんでした。

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しかし、立派に成長したゆめちゃんの姿を目の当たりにし、想いを告げることに躊躇しだします。ゆめちゃんはとても立派に成長した、私がお手伝いする必要なんてないんじゃないか。ゆめちゃんは一人で夢を叶えたいんじゃないか、手伝うなんて言ったらかえって迷惑なんじゃないか、と。

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他者の問題というものはとてもデリケートです。下手に介入すれば相手の成長や自立を奪ってしまったり、相手のやり遂げたいという気持ちの妨げになりかねないものです。ここでは小春にそういった不安を自覚させる流れが、確かに映されていました。

 

第25代目S4の皆さんがサプライズパーティの準備を手伝おうとしたシーンにて、小春が猛反対していたのが印象的でしたね。ここでは、「サプライズパーティ企画という、ゆめちゃん自身がやり遂げようとしている課題に介入しようとしている第25代S4の皆さん」と、「ドレスデザインの実力向上という、ゆめちゃん自身がやり遂げようとしている課題に介入しようとしている自分」が重なっています。

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引っ込み思案だった小春が、尊敬している先代S4の皆さん相手に意見したのには驚きました。これはきっと、自分自身に言い聞かせる言葉でもあったのでしょう。

 

虹野ゆめの課題

また、第72話の中では、ゆめが持っている課題についても再度描写してくれました。ゆめの背負っている課題、それは第59話より与えられた、ドレスデザインの実力が不足しているというものです。これについてゆめは、真摯に向き合い努力を重ねていました。

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私はこの第72話を見るまで、小春がゆめのブランドの携わる展開について、一つの不安を覚えていました。もしここでデザインの実力を持った小春が手助けをしたら、ゆめの努力が蔑ろになったり、成長の機会が奪われたりはしないか?そんなことを気にしていました。この課題に小春を介入させるのは、一歩間違えればモヤッとした印象に繋がりかねないのではないか?そんなことを、少しばかり不安に思っていました。

 

以上の2点、小春の葛藤とゆめの課題が、第72話の前半にて示された問題です。その示し方の繊細さ、丁寧さに胸を打たれます。そして第72話では、これらに対する解決を、完璧な形で描きあげておりました。本当に凄い。次の項目から、その解決方法がいかなるものだったかを語っていきます。

 

ゆめのポテンシャル

小春からドレスデザインの手伝いの申し出を受けたとき、ゆめがどのような受け止め方をするか?これは一歩間違えれば彼女の印象を悪くしてしまいかねない問題でした。

その解決は、第72話の中で、「サプライズパーティの準備」を通して示されていました。先代S4の皆さんに自分の力を見てほしいと、絶対一人で成し遂げてみせると意気込んでいたサプライズパーティの企画。これを急な仕事によって成し遂げられなくなったゆめですが、その姿は落ち込むどころか凛としていて、仕事をしっかりやり遂げた自身の行動を肯定できていました。

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サプライズパーティの企画を成し遂げられなくとも、一切目を曇らせなかった彼女の姿。その姿からは、逆境においても芯のブレない彼女の強い心根を感じられました。


今回は小春や先代S4の皆さんが手伝ってくれたことで無事開催できました。しかしもし仮に、誰の助けも借りられずパーティの開催を果たせなかったとしても。その無事開催できなかったところから、ゆめなら何かを成し遂げられたのではないか。どのような状況からでも、彼女は最終的に「みんなを笑顔にする」という一番の目的を達成していたのではないか。そんな確かさを感じました。

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さて、これが前の項で語った、ゆめの課題への解に繋がります。デザインの実力不足という課題に他者が介入することで、ゆめの成長の妨げに繋がってしまわないか?その答えは簡単、「ゆめちゃんはそんな子じゃない」です。ひめ先輩も言っていました。これは完璧なアンサーです。

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サプライズパーティの準備に間に合わなくとも凹たれずにどっしり構えていた様子、彼女のそんな強くて優しい、建設的な思考は、すべての物事において一番大事な目的を成せる答えを見つけるのではないか。そのように信じさせてくれる、ポテンシャルを感じました。

今回第72話にて、自身の目的を達成するための最善の行動を選べるゆめの才能を見せてくれたことで。もし仮に小春ちゃんから手伝いの申し出がなくても、今回サプライズパーティに間に合わなくとも正しい行動を取れていたように、彼女は自分自身が一番満足のいく方法によって、ベリーパルフェのドレスデザインと向き合っていただろう。そう思わずにはいられません。

 

小春の出した答え

次に、小春に与えられていた問題の話です。ゆめの夢に介入することで、彼女の迷惑になってしまうんじゃないかという、恐れや不安。それらと向き合った結果、最終的に彼女はゆめの夢に携わる道を選びます。小春はどのような答えを出したのか。自身の問題をどのように解決したのか。

 

今一度、第72話においての小春の感情の変遷を振り返ります。

最初、小春はゆめちゃんの役に立ちたいと思っていた。

だからドレスデザインの実力不足に悩むゆめちゃんをお手伝いしようと考えた。

しかし、ゆめちゃんは立派に成長していた。

デザインの実力不足も、きっと一人で乗り越えていけるように見えた。

ここまで考えて、小春は一度、ゆめのお手伝いをしようと提案するのをやめた。

 

ゆめちゃんは、本当に立派になりました。彼女は一人でもやっていけるだろうという、ポテンシャルがあることは話の中で示されていました。小春の手伝いが役に立つか立たないかと問われれば、それは大いに役に立つのでしょうが、必要性があるのかとまで問われれば、ないと言い切れます。

 

なぜ、手伝うことは必須ではないのに、ゆめちゃんの課題に踏み込むことの恐れも自覚したのに、小春はゆめのブランドに、ゆめの夢に携わることを決意したのか?

それは……

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「ゆめちゃんが好き」

ゆめちゃんのことが、大好きだから。これが全てなんですよね。これが、自身に与えられた問いに対して小春の出した答えです。自分は要らないかもしれない、迷惑かもしれない。それでも、ゆめちゃんが好きだからという己の感情一つで、この答えを選び取ったのです。結局は、大好きだからという気持ちで、ゆめちゃんの夢に携わる決断をしたのです。

第72話の中で、小春が介入しなくてもやっていけるゆめちゃんの強かさを描きながら。小春がゆめちゃんの夢に介入することの問題点や葛藤を描いきながら。最終的に小春がゆめちゃんの夢に介入することの決断を、小春の「ゆめちゃんが好き」という感情一つに落とし込んだのです。これがいかにすごいことか…

 

あなたは一人で生きていけるかもしれないけれど、あなたのことが好きだから、私はあなたと共にいたい。携わなければいけない理由はないけれど、好きだから一緒の夢を歩きたい。これはもう愛の告白ではないか……

虹野ゆめというトップアイドルの持つ夢は、もう生涯を捧げる生き方そのものと言っても過言ではありません。彼女の夢に携わるということは、彼女の一生に携わることでしょう。ゆめの夢の重みは、全ての視聴者より、作中人物の他の誰より、小春自身が一番知っていることです。幼少からずっとそばで見て来た、彼女しか知らないことです。

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ゆめの夢に、人生に介入する行為には、どれだけの勇気が必要だったことでしょう。私たちには計り知れない重み、私たちには計り知れない愛です。
その重みを知りならも、ゆめちゃんが好きだから、彼女の夢に携わりたいから、一緒の道を歩みたいと告白した。これはもう、プロポーズです。本当に尊い……

 

以下に、第72話ラストシーンの小春の告白の一文を載せます。

「あのね、私ね、私……ゆめちゃんが好き。」

「えっ?」

「大好き、とっても好き、いっぱい好き。だから……私もこの足で一歩を踏み出して、夢を掴むよ。夢に近づくよ。」

「ベリーパルフェのデザインをお手伝いしたい。一緒に歩きたい、ゆめちゃんのブランドを、星たちの空へと羽ばたかせる道!」

「全部私の言葉だよ!」

「行こう、一緒に。ずっとどこまでも……思いっきり羽ばたかせよう!2人のベリーパルフェのツバサ!」

「小春ちゃんと一緒に!」

「ゆめちゃんと一緒に!」

「2人の一番星に辿り着くまで!」

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アイカツスターズ!第72話、本当に魅力的な回でした。こんなに感動したのは昨年の劇場版アイカツスターズ!ぶりです。絵や展開による感動もさることながら、お話の問題定義からその解決までの流れの示し方が非常に美しく、感嘆の言葉しかありません。

小春をベリーパルフェのデザインに携わらせる際、ゆめの気高さを一切損なわない描き方をしていたこと。そして小春がゆめの夢に携わることの決断が、ゆめに対する大好きの気持ちにもとづいたものだったこと。涙が止まりません…… 

新キャラも登場するとのことでさらに盛り上がりつつあるアイカツスターズ!ですが、まずは七倉小春ちゃんが幸せになってくれたことに、この上ない満足感があります。ありがとうアイカツスターズ!、ありがとう、ゆめこは。Forever……

 

 

終わり

【キラキラ☆プリキュアアラモード】琴爪ゆかりの"退屈"について 〜第16話 感想・考察〜

アニメキャラの感情に真剣に生きていく。

 

キラキラ☆プリキュアアラモード第16話、最高の回でございましたね…少女革命ウテナといいアイカツスターズ!といいリトルウィッチアカデミアといい、最近面白いアニメが多すぎて心臓がペシャペシャになる、助けてほしい。

 

さて今回の記事ではプリキュアアラモード16話を視聴しての、琴爪ゆかりさんについての考察を垂れ流していこうと思います。今回描かれた琴爪ゆかりさんの「好きがわからない」という悩みから、琴爪ゆかりが退屈を感じていた理由に新しい解釈が生まれないか?ということを考えました。

 

それではやっていきます。

 

これまでの琴爪ゆかりの"退屈"への解釈

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16話以前の、主に第5話から読み取れる琴爪ゆかりの退屈についての解釈をおさらいします。琴爪ゆかりが毎日を退屈に過ごしていた理由。その理由は「なんでも人並み以上にこなせる能力を持っていたから」であると捉えていました。

 

何をやっても上手にこなせる、結果が見えている。周りの人々は皆似たり寄ったりの称賛の言葉を投げかけてくる。だから退屈。なるほど、そりゃあ退屈だろうと、納得がいきますね。

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「琴爪ゆかりは、なにをやっても人並み以上にこなせるため、退屈を覚えている」、これは確実に正しいものであると思います。したがって私が今から述べるのは、これを否定するものではありません。これと共存する、もう一つの新しい解釈です。深読み度が高くこじつけな部分も多いかもしれませんが、ジャンジャンやっていきます。考察、正しかろうと間違っていようとジャンジャンやっていくぞ。

 

第16話の琴爪ゆかりについての考察

私は第16話で描写された以下のポイントから、琴爪ゆかりの”退屈”に対する新たな解釈を見出しました。

  1. ゆかりは幼少期からずっと「好き」がわからない
  2. 祖母や両親はゆかりに「好きに生きろ」と説いている。そしてゆかりはそれを実践しようとしている
  3. ゆかりは日曜のお茶会への参加に乗り気ではなかった
  4. いちかとパティスリーでのお茶会を開くまで、自身が茶道を好きであることがわからなかった

 

まず、これらの情報から読み取れることを考えていきます。ゆかりさんは第5話の回想にて茶道を習っている様子が描かれていました。

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にも関わらず③のような様子を見せたところから、どうやら現在は茶道から離れていることが読み取れます。

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なぜ彼女は茶道から距離を置いたのか?という部分を考えると、まず  。少なくとも今回まではゆかりさんは自身が茶道を好きであることがわからなかったこと。そして②、祖母や両親から「好きに生きろ」と説かれていたこと。この二点を踏まえると、ゆかりさんは自身が茶道を好きであるかわからなかったから、祖母の言う「好きなことをやれ」を実践できないため、茶道から離れていた。という風に推測できます。

 

ではここからさらに踏み込んで考えたいのは、「茶道から離れたゆかりさんはどのような行動に出たか?」という部分。あっここからさらに深読み度が増していきます。

 

ここで考えるのは、①と②です。ゆかりは幼少期から「好き」がわからないという悩みを持っている。そして祖母からは「好きに生きること」を言いつけられている。であれば、「好き」がわからないため茶道から離れたゆかりさんは、祖母や両親の言いつけである「好きに生きる」を実践するために、自身の「好き」を探していたのではないか。そういうことを想像します。

 

琴爪ゆかりの気まぐれな行動

5話では、ゆかりさんがスポーツ、勉強、ファッション、クレーンゲーム、いろんなことに取り組んでいる様子が描かれていました。

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この、ゆかりさんがいろんな物事に取り組んでいた理由ですが、上の項で述べた考察を踏まえると、ゆかりは「自分の好きがわからないので好きを見つけたい」という思いを心に秘めており、だからこそとりあえず興味の湧いたものを片っ端からやってみていた。考えられないでしょうか。

 

5話の時点では、ゆかりの行動についての理由を「面白いものが好きであるため、それを探すためにいろんな分野に取り組んでいた」と読み取っていました。

これを、「自分にとっての好きを見つけたくて、面白みのあるものを探していた。結果として様々な分野の物事に取り組んでいた。」と読むと、ゆかりさんが「色々なことに挑戦していた」という行動の理由に、より強い説得力が生まれないでしょうか?

 

また、「気まぐれである」という性格が、「好きを探したくて色々な分野に挑戦していった結果、側から見ると気まぐれに見えていた」とも読み取れるのが面白いと思います。

 

琴爪ゆかりの"退屈"についての新しい解釈

さて、ゆかりさんが色んなことに取り組んでいたという行動に、そういった目的があったとして。しかしながら何に取り組んでも彼女は"退屈"を感じていました。第5話の時点では、この退屈の理由を「何をやっても人並み以上にこなせるから」であると捉えていました。

しかし、ゆかりさんの行動の目的が、上記にて考察したものであるとすると、「何をやっても好きがわからないから」とも解釈できるのではないでしょうか。

 

好きを見つけたくて色々なことに挑戦するけど、なにをやっても好きを感じられない、皆が楽しめていることを楽しめない、退屈だ。

これが私の考える、琴爪ゆかりの退屈を感じていた理由への新たな解釈です。

 

もちろん、どちらかが絶対的なものだと言い切る訳ではなく、この両方が複雑に絡み合って、琴爪ゆかりの退屈は生まれている、のではないかと言いたいわけです。

 

新たな"退屈"への解釈が生む深み

私は第16話を見るまで、琴爪ゆかりの退屈”の理由を「なんでも人並み以上にこなせるため」だけと考えており、彼女のキャラクターについて「何でもできる、気まぐれな完璧美人。何でも器用にこなしてしまうため毎日を退屈に過ごしている」と読んでいました。

 

しかし第16話を見てアレコレ考察した結果、"退屈"への解釈は「何をやっても"好き"がわからないため」というのも考えられ、それを踏まえると彼女について「茶道を離れ、自分にとっての好きを探そうとして様々なことに取り組んでいたが、なにをやっても面白みを感じられず、毎日に退屈を覚えていた。そしてすぐに興味の対象を変えるものだから周りから気まぐれと称されていた。」というふうに読みとれるなと思いました。

 

より複雑な琴爪ゆかりの感情の背景が感じられ、キャラクターの深い部分が感じ取れ、実に面白いです…好き…

 

なにをやっても上手くいく、すなわち結果が見えてしまうからつまらない、退屈である。という、物事の結果という外面的な要素に起因する退屈、そして好きを見つけたいが好きを感じられない、他の人のように楽しみを感じられない、退屈である。という、物事に対する自分の心、すなわち内面的な要素に起因する退屈。琴爪ゆかりの退屈は、内外両面から生まれていると解釈できるわけです。

 

退屈"というのは、琴爪ゆかりというキャラクターにとって核となる要素であると思います。その要素に、この第16話にきて新しい解釈が生まれたのはたいへん凄いことだと思いませんか?既に上質に出来上がっていた琴爪ゆかりのキャラクター造形が、ここにきてさらに深められたというのは非常に感動ポイントではないでしょうか?

 

また、第5話を今一度見返してみると、いちかとゆかりのやり取りの意味合いが増すんですよね。

「みんなお菓子づくりが得意には見えないけど、なんでわざわざ作ってるの?」

「大好きだからです。大変だけど、ちょっとずつでもできるようになるのが、面白いんです!」

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この時点では"好き"がわからないゆかりさん、最初からなんでも出来るゆかりさん、このいちかちゃんの言葉を聞いてどう思ったのか…想像が膨らむんですよね…

第16話を観たあとに視聴する第5話、見えてくるものがたいへん変わっているので強くオススメします。

 

プリキュアアラモード、最高〜!

とまあ、こんな具合に琴爪ゆかりさんの"退屈"について考察したわけですが…本編についてそのように明言されたわけではありません。私も絶対こうであるとは絶対言い切りません。

 

その真偽はともかくとして、私が感動するのは、こういった考察が可能であるほど、本編描写がしっかりしていることです。ゆかりさんのキャラクターの描き方がしっかりしているからこそ、あたかもそうであるかのように解釈して観ることが出来るんですよ。

 

こうも深く考察できるのは、作り手の皆さんが琴爪ゆかりというキャラクターに真剣に寄り添い、それに基づいた真剣な表現を打ち出しているという事実に他ならないでしょう。

 

考察は考察に過ぎないですが、考察に至らせる源となる最高のアニメがあるのは紛れもない事実です。これからの放送も楽しみですね、全力で楽しんでいきたいと思います。

 

せーのっ、プリキュアアラモード、最高~~!

 

終わり

 

【少女革命ウテナ】薫幹の話 〜第5話 感想・考察〜

少女革命ウテナ……最高~~!!

最近、Twitterのフォロワーさんに勧められ、少女革命ウテナ」を観はじめました。いやはや……たいへん、たいへん面白い作品ですねこれは

 

観進めていく中、とうとう第5話であまりの面白さで胸がいっぱいになったので、まだ話は序盤も序盤ですが記事に感想を書きまとめていきます。語りたいのは第4話・第5話のメインキャラクター、薫幹についてです。

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薫幹、最高~~!

 

少女革命ウテナのテーマ

まだほんの数話しか見てないのにいきなりテーマの話するの?バカなの?って感じですけど、まあ聞いてください。私は少女革命ウテナを第3話まで観た段階で、この作品はきっと「女が男をやっつけるお話」なのだなぁ、と大ざっぱに捉えておりました。(大ざっぱすぎる)

あくまで現時点での私個人の印象なので、全編観た方からは見当違いだぞって思う部分が多いかもしれないですけど温かい目で見てください。許してください。

 

姫宮アンシーを狙う""が現れ、その""の哀れな支配欲を描き、主人公の天上ウテナがそいつを打ち倒すいけ好かない野郎をぶっ飛ばす。そんな感じの流れでいくのかなぁと。各話で「女にやっつけられる男」が登場し、そいつがバッサリ打ち倒されるのを見て、愉快痛快な気分になれる作品なのだろうなぁと、ざっくり思いました。

 

1話、第2話においては緑のロン毛・西園寺莢一の扱われ方が印象的でしたね。

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彼は姫宮アンシーに対する振る舞いから、その強烈な男根思想を見せつけ、視聴者たちの不快感を煽りに煽り、最期はウテナに討たれ惨めに敗北する。非常に痛快なキャラクターでした。好き。

 

人畜無害な美少年・薫幹

さて、そうした少女革命ウテナという作品のなか、第4話にて登場したのが薫幹です。

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4話のお話の構成は少しばかり変化球で、第4話の冒頭で少し先の未来の様子を描いておりました。その未来とは、幹薫が、ウテナたちの前に敵として立ちはだかる光景です。

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いずれ薫幹は、少女革命ウテナ「女が男をやっつけるお話」というテーマにおける""になる、それが決定されているということですね。

 

しかし、第4話を最後まで観たところ、一つ引っかかる点が。この幹薫という少年、まったく悪いやつには見えないということです。それどころかメチャメチャ良いやつ。姫宮アンシーを支配することに反対すらしており、姫宮に対して向けている感情は純粋な思慕。誰に対しても心優しい、芸術を尊ぶ非の打ちどころのない美少年。そりゃあ好印象です、普通に良いやつだと思いました。

 

されど、第4話冒頭にて示されている通り、彼は近いうちに天上ウテナに敵対する""になる。しかし男根太郎の西園寺莢一と比べて、薫幹にはムカつく感じが一切ない。西園寺莢一と違い、このままでは倒してもスカッとしないのでは?という疑問が湧きます。

 

さあ、第5話にてどうやって彼を""に仕立て上げるのかその仕立て上げ方にいかなる説得力を持たせるのか固唾を飲んで第5話の視聴に臨みました。

 

露出する薫幹の男根

ブラボー!第5話、ブラボー!完璧です!薫幹が""になる流れが、少女革命ウテナという作品にとっての敵役になる流れが、完璧でしたね、第5話。

 

何が完璧なのか語る前に、一旦ここで薫幹の感情をおさらいしましょう。まず彼は、姫宮アンシーを恋慕っております。第4からその様子が顕著になりました。

 

彼は過去に妹と共にピアノを楽しんでおり、その妹のピアノの音色が特別好きだった。紆余曲折あり妹はピアノを弾かなくなってしまい、薫幹は妹の音を表現することだけを目的に、ピアノを弾き続けておりました。

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そこで薫幹が姫宮のピアノを聴いたところ、どうやら姫宮のピアノの音色は妹のそれに、薫幹が追い求めていた音色と同じだそうで。これが、彼が姫宮アンシーを恋い慕う理由だと。なるほど、よく理解できます。ある種、妹と姫宮アンシーを重ねているとも言える、ぶっちゃけシスコンを拗らせてる感じですね。

 

さて、そうした感情を持つ薫幹。少女革命ウテナという作品は、彼が持つその感情に基づいて、彼が""となる筋道を素晴らしく描きました。

 

5話のなか、薫幹は、妹と生徒会長の桐生冬芽が性行為をしている様子を、間接的に目撃します。

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このシーン邪悪すぎる。(褒めてる)この時点でもう、薫幹の感情を考えると笑い転げてしまいそうです。(笑うな)

 

そして生徒会長の桐生冬芽は、「本当に大切なものは、自分の手に入れて守らなきゃ、人に取られちまうぜ、ミッキー」という言葉を薫幹に投げかけます。

 

先ほど述べた通り、薫幹はある部分において、妹への感情と姫宮アンシーへの感情とを重ねています。妹が他の男に食われる様子を目の当たりにし、姫宮アンシーが天上ウテナに支配されている現状を顧みて、彼がどう思ったか、想像するに容易いです。

 

大切なものは自分の手で守らねば。妹のピアノの音色を守らねば。姫宮アンシーを守らねば。支配されるより先に支配せねば。

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この時の目が、西園寺莢一のそれと同じなんだよな…

姫宮の心に触れることを放棄し、自分本位の欲望を押し付ける。ここまで来ると、人畜無害で純朴な美少年だった薫幹はもういません。

薫幹は、少女革命ウテナにとっての""になったのです。

 

 

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ところで幹薫の精神世界、ピンク色の天蓋付きべッドの中から桐生冬芽が雄の本能を囁きかけてくる光景、あまりにも隠喩が強すぎる…最高…

 

早く第6話が観たい

5話のこの展開の秀逸さどうでしょう!?4話で薫幹を好印象のキャラクターとして描いておきながら、5話にて支配思想に飲まれ、ウテナと対立させる過程の作り方!妹と、ピアノと、桐生冬芽と。すべての配役を使いこなし、薫幹の姫宮アンシーへの純粋な思慕が、哀れな支配欲へと変貌する流れの描き方…5億点!!

 

4話で「どうしてこんな良い奴が男根太郎になってしまうんだ?」と思わせといて、5話で「いやぁ~そりゃなるわ!男根太郎になるわ!」と深く納得させるこの手腕!いや~~少女革命ウテナ最高!(大興奮)

 

そんな気持ちが高まりすぎてもう、記事にまとめずにはいられなかった次第です。他にも色々語りたいことがたくさんあるのですが、続きが観たいのでとりあえずここまでで5話ラストシーンの、薫幹の妹の「実はピアノなんて弾けなかった」辺りの爆弾発言も絡めたことを書きたかったのですが、ひとまず切り上げます。

 

本当にまだ第5話までしか見てないので今後の回を観たら自分の解釈が全然違ってることに気付くのかもしれませんが、とにかく今のこの感動を大事にしたい。かけがえのない今を大切にしたい。

 

終わり

【アイカツスターズ!感想・考察】また会う日まで、七倉小春

アイカツスターズ!第30話・第31話を見終えての感想・考察になります。

 

 運命のアイカツスターズ!第30話…小春ちゃんが…イタリアに旅立ちました…

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「ひょっとして、小春ちゃんとお別れの展開が待ち受けているのか…?」と、数ヶ月間ほど悶えたり苦しんだりしながら心の準備をしてきましたが…とうとう本当に…行ってしまわれました…

 

しかし、なぜでしょう。第31話を見て、消失感を覚えつつもどこか安心している自分がいました。小春ちゃんは確かにいなくなったけど、いなくなっていないような感じがして… 

正直な話、私はアイカツスターズ!の物語において、小春ちゃんがどう扱われるのか、ハラハラしながら見ておりました。CGステージには出演しないし、彼女のアイカツに対する姿勢もゆめ・ローラに比べるとどこか消極的に見えるし…

ひょっとしたら、このまま”いなかった”ことにされるかのごとく、ひっそりフェードアウトしてしまうのでは…という不安がありました。第1話の時から彼女が好きだっただけに、どうか作品の中で大切にされてほしい…切実にそう思っていました。

 

しかし、第31話を視聴し、その不安が杞憂だったことを思い知りました。第31話に小春ちゃんは一度も登場しませんでしたが、確かにそこに小春ちゃんの存在を感じられたのです。

アイカツスターズ!の物語で、小春ちゃんはたくさんの役割を担っていました。小春ちゃんが四ツ星学園を去ったことで、その役割が他の誰かに引き継がれ、人間関係に明確な変化が起こり…これは彼女がここにいた何よりの証であるように思います。

彼女はどう言った役割を担っていたのか、何を残したのか。そんなことをこの記事でつらつらと書いていきます。

また、第30話まで見てきたことで、小春ちゃんの内面についてもある程度わかるようになってきました。その考察についても記そうと思います。

 

 

小春の親友 早乙女あこ・香澄真昼

まず、小春が残したものの話。それは、あこ・真昼との繋がりです。

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アイカツスターズ!が始まって最初の頃は、ゆめ・ローラ・小春の3人グループでの行動が基本でした。そこにあこ・真昼の2人が新たに加わってきたのですが、この2人を輪の中に導いたのは小春でしたね。彼女たちとの縁は、小春がきっかけで生まれたものです。我々視聴者の目線では、主人公の虹野ゆめを中心にアイカツ仲間が増えていく…というように見えています。でも、あこ・真昼にとっては違います。

 

あこは第17話「本気のスイッチ!」で小春と打ち解け、第18話「ゆりちゃんと一緒」ではカフェで二人一緒に行動しています。劇場版ではさも当然と言わんばかりに小春とペアを組み、ゆめロラに引けを取らず(?)仲睦まじい様子でした。

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そこから少し時間をおき、第24話「笑顔はなないろ☆」ではゆめ達と仲良くしておりました。特に描写などはありませんが、小春と交流を深めるうちに、小春の友人達とも仲良くなり次第にグループに入っていった…という流れは想像するに容易いです。とにかく、最初はやっぱり小春なんですね。

 

そして真昼も同じくです。美組の生徒達から「話しかけにくい」という印象を持たれていた真昼に対して壁を作らず自分から話しかけに行き、まだツンツンしていた時期の真昼とも打ち解けました。そして小春の紹介でゆめ達とも仲良くなることが出来たんですね。

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どちらも順番として、小春との交流が先で、その後ゆめ達と仲良くなっています。第28話「ハロウィン★マジック」でのあこと真昼のセリフの衝撃が記憶に新しいですね。 

あこ「親友のあたくしを差し置いて~~」

真昼「小春は私の親友だし…」 

この、色々と気難しそうな二人に親友認定されてるのって、正直本当にすごいことなのでは…

 

あこと真昼、この二人が今ゆめ達と仲良くしていられるのは小春のおかげであり、いわば、あこと真昼がゆめ達と仲良くしている状況そのものが、小春がいたことの証明なんですね。小春は四ツ星学園を去りましたが、小春のもたらした繋がりは残ります。

 

 

引き継がれる役割

それを踏まえた上で第31話のあこの行動を見ると、感慨深いものがあります。第30話までの、あこのゆめに対する接し方は、見るからにトゲがあるというかなんというか…呼び方もずっと、フルネームで"虹野ゆめ"でしたしね。

素直じゃないだけで内面はいい娘だし、心ではゆめのことも好きなのでしょうが…虹野ゆめはスバルきゅんとの恋のライバルなのだ、という思いが邪魔をしていたのでしょう。

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小春との接し方はたいへん柔らかかったんですけどね。上の項目で書いた通り、小春との交流がきっかけで、今ゆめ達の友達になっているわけですから。「虹野ゆめは恋のライバルだけど、親友の小春の幼馴染だし、まあ…」という心境だったのかもしれません。

 

しかし、小春が四ツ星学園を去った今、その距離感は大きく変わったように見えます。第31話で、小春がいなくなって元気をなくしていたゆめに、なんとあこ自らユニットに誘おうと行動に出ていました。何気にあこからゆめに声をかけることすら、これがほぼ初めてです。(一応あるにはあったけど、敵意むき出しだったり、嫌味ったらしかったり…)

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親友の小春が旅立ったというのはあこにとっても大きな出来事であり、だからこそ小春と一番近い立ち位置にいるゆめのことを気にかけたのでしょう。本当、優しい。

 

また、ゆめの呼び方が"虹野ゆめ"から"ゆめ"と、名前呼びになっています。この呼び方の変化は、今まで若干遠かったゆめとの距離感を縮めて、ゆめと友達の関係になろうとする、あこの意思の表れではないか…と思いました。

 

ゆめは今、幼い頃からずっと自分を支えてくれていた小春がいなくなり、またキチンとさよならを言えなかった後悔もあり、精神的に不安定な状態です。そんなゆめの心を小春の代わりにフォローしてやらねば…と名乗り出たのは、小春によりゆめ達とつながった、早乙女あこ。

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小春は確かに四ツ星学園からいなくなってしまいましたが、小春が繋げた絆が、小春の担っていた役割が、誰かに引き継がれてそのまま残ります。冒頭で第31話に小春ちゃんの存在を感じる…と述べたのはそういう意味でした。小春がいたからこそ、あこにこういう行動を起こさせたのです。

 

ここに来て、第30話ラストの小春のセリフが沁みます…

「大丈夫だよ、ゆめちゃんなら…」

あっ…また泣けてきた…

 

 

始まる、本気のアイカツ!

第31話と第30話以前との大きな変化、それは"ローラと小春が一切登場しないこと"です。実は、第30話までのすべての回でゆめ・ローラ・小春は必ず登場しており、基本的にこの三人の視点を中心に話が進んでいました。しかし第31話では…イタリアに旅立った小春だけでなく、なんとローラまで登場しませんでした。

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序盤はこの3人でわいわいアイカツしながら、「S4の先輩たち、すごい…!」と言うだけの、未熟なアイカツでよかった時期でした。

しかし彼女らはもう、「S4に"なりたい"」から「S4に"なる"」に変わりつつある時期なのでしょう。この第31話での変化はそれを表しているように思います。

 

三人だけのお気楽なアイカツは終わり。夢は見るものじゃない、叶えるもの。彼女ら全員、次のアイカツのステップに進もうとしています。

 

また、小春には「ゆめを支える」役割の一部として、「ゆめの弱さを肯定する」というものがあったように感じます。別に小春がゆめを甘やかしていたという訳ではなく、小春はゆめが弱みを見せられる相手だった、ということです。

第21話「勝ちたいキモチ」、第27話「小さなドレスの物語」からその様子が読み取れました。第21話のCDオーディションにてローラとの実力差に打ちひしがれ、弱々しく小春に抱きつき、どうすれば良いか答えを求めたのは、あまりポジティブではない行動だったように思います。

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第27話では、「ひめ先輩みたいなS4になりたい」という自身の目標が間違っているのではないかと、揺らぎを覚えているにもかかわらず、小春が「夜空先輩みたいなS4になりたい」と言いかけた瞬間、ホッとしたような、安堵の表情を浮かべています。

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以上の描写を見ると、ゆめは幼馴染であり、昔から自分の良い部分もダメな部分もずっと見続けて、優しく受け入れてもらっていた小春に、自身の弱さを肯定する役割を求める節があったように見えます。

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弱みを見せられるほど信頼し合っている関係は悪いものではありませんが、それなしでは自分を支えられない、誰かに依存しているような状態で、アイドルとして大きな結果を残すのは難しいことです。第12話「はばたくガールフレンド♪」で如月ツバサ先輩も言っていたことでした。「アイドルは一人でも強く生きていかなければならない」と。

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 一人でも輝けて、みんなとならもっと輝ける。頼り合うのではなく、高め合うような関係が理想的です。

 

ゆめはもう、S4を夢見て憧れているだけの少女ではなく、S4になる夢を絶対叶えてやるぞ、というステップにいます。ゆめがこの夢を具体的に叶えるためには大きく成長し、今の誰かに頼っている状態を脱し、自立しなければなりません。小春とのお別れは、きっとゆめの大きな成長を促すことでしょう…

 

されど、大好きな小春ちゃんが去ったばかりで、ゆめはまだ自立の第一歩を踏み出したところ。到底一人きりではまだ難しい現状です。さらには一番一緒にアイカツに励んできたローラまで、今は近くにいない。精神的に辛い時期です。

 

そこでゆめを支えるのは、小春が導いた新たな仲間である、今までもっともゆめと遠い位置にいた、あこ。構図が面白いですね…新しくできた仲間やS4の先輩方の助けを得て、己の弱さを克服し、ゆめがS4に"なる"ための、本気のアイカツ!が始まります。

 

小春とS4の目標

ぶっちゃけますが…「小春ちゃんは本気でS4になる気があるの…?」と感じていた視聴者は、私だけではないはず。いや、その…全体的に、小春の競争に対する姿勢がどこか消極的に見えるじゃないですか…?

 

ローラと比較するとよくわかります。ローラは同じ歌組のゆめと競い合い、負けたら盛大に悔しがる。対して小春は、同じ美組の真昼に負けてもあまり悔しがらない。「実力は大人と子供ぐらい差がある」と、勝つのを諦めてる節があるくらい。

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同じ組でS4を目指すもの同士として、ローラとゆめはライバルの関係ですが、現状小春と真昼はライバルの関係とは言い難いです。S4になりたいという思いはホンモノでしょうが、真昼に勝たなくてはS4になれないという事実くらいは彼女も悟っているはず。この現状を見ると、「S4になりたいのならもっと焦れ、小春!ファイトだ!」と暑苦しいエールを送りたくなります…

 

…しかし果たしてそれでいいのでしょうか。小春は確かに真昼に勝ったことがありません。S4になるのなら勝たなくてはいけません。

しかし、だからといって、小春が積極的に勝負事に望むようになるのが本当に良いことなのでしょうか?なぜなら、この勝負事に消極的な性格は小春の持ち味だと、私は感じるからです。

 

無闇に競争せず、周りの誰とも壁を作らず接する。そういった性格が、気むずかしい性格のあこや、周囲に近寄りがたい印象を受けさせる真昼とも親友の関係に至れたのでした。小春が繋げたあこや真昼との絆が、ゆめ達が成長するためのストーリーに大きく貢献していることは、上の項目ですでに述べました。勝負ごとに消極的な性格が問題でS4になれない、だからその性格をまず直そう…!と結論づけるのは、明らかに間違いです。

 

第29話「本当のライバル」にて響アンナ先生がローラに贈った言葉が印象的でした。

「虹野と比較して、同じことをして、勝った負けたなんて思う必要はない」

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真昼に負けているから、小春の価値がなくなるわけではありません。小春自身、それを理解しているように見えます。真昼に勝ちS4になることより、S4になって何を成し遂げたいのか?そこが一番重要であり、そのために小春は考え、日々答えを探している様子でした。(第27話「小さなドレスの物語」、第30話「七色のキャンディ」)

 

…そういう意味では、勝った負けたで自分の価値を決めない小春は、ある意味ではローラより先に進んでいるのかもしれないですね。もちろんそもそも真昼との差が歴然過ぎて勝負にすらなっていない様子なので、小春にもまだまだ成長の課題はありますが。

 

第8話「小さな輝き」で取った審査員特別賞が、小春にもっとも相応わしいものだったと個人的に思います。

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競争で計れる実力より、もっと違うベクトルで評価されるべきものが小春には宿っているように感じるからです。小春には小春だけの良さがある、ナンバーワンよりオンリーワンなんですね…

 

いろいろ書きましたがもちろん、小春が今後勝ちを取りたい…!という考え方をもつようになることを否定するものではありません。彼女がイタリアに旅立とうと決心したのも、今のままじゃダメだ、成長して新しい自分を見つけたいと思ったからであります。ひょっとしたら帰ってくる頃には勝負の舞台にも積極的に望むようになっているかもしれません。

 

しかし、彼女の今の性格がたくさんの人達に愛されていたのもまた事実で、今持っている良さを捨てるような道を選択するのはおそらく誤りです。誰からも親しまれる小春の純粋で清らかな心、それこそが夜空先輩にも認められた小春の個性であり、アイカツスターズ!の舞台では最も評価されるものです。

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新しい小春になっても、そこだけは見誤らないだろうという信頼があります。

 

 

…なお、そんな勝負事に消極的な小春ですが…実は…30話の間で一度だけ、明確に誰かに勝ちたいキモチを持ち、負けて悔しがった描写があります。それについては記事のもう少し後で述べますね…

 

・S4はゴールなのか?

響アンナ先生、八千草桃子先生ですが、彼女らは元S4で、現在は教師を勤めています。つまり彼女らの存在は、作中において"S4になった後の姿"を描いているものでもあるわけです。

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当たり前のことですが、"S4になること"はアイドルにとっての最終目的ではありません。S4として活躍したアイドルから教師へと転身した、アンナ先生や桃子先生がそれを物語っています。

 

今のゆめ達にとってS4はゴールとして設定されていますが、それも今だけの話。いずれS4すらもスタートラインに変わる日が来るのでしょう。

 

そう考えると、成し得たいことを成し得るには、必ずしもS4になる必要があるわけではありません。たとえ小春がS4にならずとも、納得する未来に進むのだろうなぁ…と思います。

 

 

"短所"と"個性"

ここで少し、超個性的なアイドルと評される、白銀リリィについての話をします。

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 彼女は人よりずっと身体が弱く、周りの皆と同じことが出来ませんでした。そして皆と同じ練習が出来ないからこそ、一人での練習をたくさんこなし、それにより独自のパフォーマンスを身につけました。

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部屋で療養する時間が長かったからこそ、たくさんの書籍を読んだことで、独創的な世界観を表現出来るようになりました。

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そんなリリィにゆずがプレゼントとして送った一冊の本から、彼女の"オリジナルブランドを立ち上げたい"という夢が生まれました。

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ハッと気づくのが、リリィの個性的な魅力は全て、"身体が弱い"という短所から生まれているということです。

 

S4を目指す競争において、人より劣っている部分は不利であることは当然であるように思われます。第26話「奪えない夢」にてローラも言っていました。

「身体が弱いってかなり大きなハンデだね…」

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しかし、リリィは身体が弱いからこそ、周りの皆より劣っている部分があるからこそ、「今できることは何か」を考え行動に移した結果、強い個性が実ったのです。

 

人は生まれながらに平等ではないため、万人が同じことをできるとは限りません。だからこそ、自分ができることの中で何をするか、を一番大事にしていこうというのが、アイカツスターズ!が伝えたいメッセージなのかもしれません。

 

第18話「ゆりちゃんと一緒」でのゆめのアイカツにも同じものを感じますね。フレッシュアイドル大投票会で選抜メンバーに入りたいものの、他のみんなと違いゆめには仕事がありませんでした。そのため「今できることはなにか」を考えての行動が、草の根アイカツや手作りライブ。私の目にはこのゆめのアイカツが、個性的で魅力的に映りました。

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さて、小春はどうでしょう。

目立つのが苦手、競争に消極的…彼女の短所と言える部分です。しかしこの短所があってこそ、彼女は多くの人に親しまれる、純粋で清らかな心を持ちました。まさしくこれは小春の個性で、アイカツスターズ!において最も尊ばれるもののように思います。

 

長所も短所も、周りと違う特徴は全て"個性"になる。まさしく、「○×じゃ世界は計れない」ですね。

 

 

小春の夢

さて、小春が30話の間で一度だけ、明確に誰かに勝ちたいキモチを持ち、負けて悔しがった描写についての話をします。 

小春が唯一、勝ちたいという意思を表明した回…それは第18話「ゆりちゃんと一緒」です。フレッシュアイドル大投票会で、彼女は選抜メンバーに選ばれず、強く悔しがっていました。

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小春は基本的に、勝負に勝ちたいという意思を見せる場面が極端に少ないのでした。第8話「小さな輝き」、第15話「月と太陽」でも、真昼が1位を表彰された時、素直に笑顔で祝福してました。第29話「本当のライバル」において、四ツ星学園最後の勝負の場面でも、「最後くらいビシッと決めたいな」という程度。彼女は勝ちたいという気持ちが基本的に薄いのです。

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しかし第18話では、「ゆめちゃんと一緒にステージに立ちたかった…」と悔しそうにしていました。仕事も積極的にこなし、本気で勝ちを狙いに行っているようでした。あの勝負事に消極的な小春が。そう、「ゆめと一緒のステージに立ちたい」という願いのために。

 

フレッシュアイドル選抜メンバーには4人しか選ばれません。それで小春はゆめとステージに立ちたいのだから…つまり、友人の真昼・あこ・ローラのいずれか一人には勝とうとしていたということになります。そのくらい強い意志でアイカツに取り組んでいたと解釈できます。一度やると決めたなら、友人たちが相手でも臆さない、小春の芯の強さが見え隠れします…

 

小春が勝ちたいという意思を見せたのは後にも先にもここだけであり、それだけ「ゆめと一緒のステージに立ちたい」というのは、彼女にとって非常に強い目標であったことが伺えます。

小春がイタリアに旅出つ決心をしたのは、ゆめの凄いステージを見てゆめに近づくために成長したいと願ったからであり、ゆめと共にステージに立てるだけの実力を身につけたかったのではないか…とも見えます。

 

その…小春がゆめと同じステージに立ちたいって言っても、小春ちゃんにはCGが用意されてないんだから叶うわけないじゃん…みたいな酷いことも考えられるのですが、第25話「ブロードウェイ☆ドリーム」では可能だったんですよね。こちらでは小春がステージに立ち、ゆめが舞台裏という、真逆の構図になっていました。

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小春が「ゆめと一緒のステージに立ちたい」という願いを持っていて、それを叶えられるチャンスもあったのに、敢えて叶えさせてやらないのは…きっとこれが重要な伏線で、小春が帰ってきた時それはもうすごいものが見られるのではないか…と、とても勝手に期待をしています。

 

思い返せば、小春の行動の根っこには、常にゆめが居たんですね。アイドルを目指し四ツ星学園に入ろうとしたのも、イタリアに行く決心をしたのも。

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ゆめにとって小春が心の支えであったように、父親が出張がちで寂しい思いをしていた小春にとっても、ゆめが心の支えだったでしょう。にもかかわらず、今のままじゃダメだと、ゆめの隣に立ちたいからと、成長したいからと、自ら離れる決心をしている。実は強い娘、なんですよね…

 

 そんな彼女だから、イタリアで多くのことを学び、きっと見違えるほど成長して帰ってくるでしょう。ゆめと並び立つという願いを、夢を、どうか叶えて欲しい…切実にそう思います…

 

 

 

さて、こんなところでおしまいです。

ここ最近の流れを見て、アイカツスターズ!という作品は小春ちゃんを大切にしてくれるんだなぁと…そんな感動が抑えきれず、書き認めてみました。

 

深く読み取れば読み取るほどこの作品が丁寧に作られていることを思い知り、アイカツスターズ!に対する好感度が鰻登りです…

 

「これからも一生、ゆめちゃんのファン」な小春ちゃんのファンとして、今後の展開もバッチリ見届けていきたいと思います。

 

いつか、また会う日まで、小春ちゃん

 

終わり

劇場版アイカツスターズ!感想① 『ゆめとローラの喧嘩について』

映画のネタバレが含まれています

 

 

皆さん、劇場版アイカツスターズ!はもう観ましたね?

私は先日、5回目の視聴を終えました。

何度観ても色褪せぬ面白さ、素晴らしい映画です。

 

 

さて、今回この記事で話題に挙げたいのは、予告映像が公開された時から印象深かった、ゆめとローラの喧嘩のシーン。あのシーンについて思ったことを、つらつらと書いていきたいと思います。

 


喧嘩の直接的な原因

さて、ゆめとローラの喧嘩は、なぜ起こってしまったのでしょう?

という疑問があるのも、この喧嘩は簡単に回避できたように思うからです。

 

喧嘩が起こった直接的な原因ですが、それはズバリ、ローラのゆめに対する言葉が不足していたからです。

 

学園長から真昼とユニットを組めと申し出があったとは言え、ゆめとは既に一緒にオーディションに出ようと約束を交わているのです。

 

自分と真昼、ひめ先輩とゆめがユニットを組む話は極秘だから伏せて置くにせよ、どたキャンしてゴメン、と謝るくらいのことをするのが当然の義理です。

 

これだけで喧嘩は起こらなかったし、ゆめと良きライバルの関係を継続したいのであれば言っておくべきことです。

事情は話せなくても、誠実に謝りさえすれば、喧嘩だけは回避できたでしょう。

学園長からの話を受けるだけなら、ゆめと喧嘩までする必要はまるでないのです。

 

しかしローラはゆめに対し一言謝ることもせず、それどころかまるで、最初から喧嘩をするつもりであるかのような、あえてゆめを怒らせる言動を取りました。

 

これでは喧嘩に発展するのは必然です。

なぜローラは、事情は話せないにせよ謝りすらしなかったのでしょう?

ゆめを怒らせるようなことまで言ってしまったのでしょう? 

 

まるで、ゆめに嫌われようとしていたかのようです。

 

 

ローラが喧嘩を起こしたきっかけ

その答えは、作中のローラの台詞から察することができます。

まずは一つ目、喧嘩が始まる直前の会話です。

 

ゆめに対してローラは、

「そんなにひめ先輩のことが好き?」

そう質問しました。

そしてゆめは、

「大好き」

と、返答します。

 

この返答を受けた瞬間、ローラは真昼とユニットを組むことを決意していました。

そして、ゆめに対して何も告げないことも決意したようです。 

 

つまり、「ゆめがひめ先輩のことが好きかどうか」が、

ローラにとってこの喧嘩を起こすきっかけだったんですね。

 

しかし、なぜゆめがひめ先輩のことが好きだと、

ローラはゆめと喧嘩しなければならないのでしょう?

 

「言わない方がいいこと」

次に、ゆめにユニット解消の理由を教えて欲しいと言われた時のローラの返答、「言わない方がいいこともある」について考えていきます。

 

この、ゆめとのユニット解消の理由たり得る、

「言わない方がいいこと」とはなんでしょう?

  

以下に、ゆめに対してローラが言わなかったことを挙げてみます。

  • ゆめに対してのゴメンなさいの一言

これは言った方がいいことです。喧嘩を回避したいのであれば、しっかり言っておくべきことでした。

  • 学園長からの次世代S4育成計画の申し出の件
  • ゆめとひめ先輩のユニットの件

これらは言わない方がいい話というより、極秘だから言えない話、です。


これらはいずれも「言わない方がいいこと」に当てはまりません。 

では一体、「言わない方がいいこと」とはなんだったのでしょう?

 

ローラの本心

後々の仲直りシーンを見るとわかることですが、ローラの本心には、ゆめとユニットを組みたいという気持ちがありました。(仲直りシーンを見ずとも、普段の仲良しっぷりを見れば察せることですが)

次世代S4計画なんて関係なく、ローラにはただ純粋にゆめと一緒にいたいという気持ちがあったんですね。

 

しかし、ゆめはひめ先輩のことが好きなのです。ローラはそれを確認しました。

ローラが自分の気持ちをゆめに告げると、ゆめがいずれ大好きなひめ先輩とのユニットを組むとき、素直に喜べなくなってしまいます。

ローラがゆめと一緒にいたいという気持ちは、ゆめがひめ先輩とユニットを組むとき、邪魔になってしまうんですね。

 

そう、「言わない方がいいこと」

それは、「ローラ自身のゆめとユニットを組みたいという気持ち」です。

 

確かに、事情を説明すれば喧嘩には発展しないし、ゆめも傷つかずに済んだかもしれません。

 

しかし、いずれゆめがひめ先輩とユニットを組むにあたっては、ゆめと一緒にいたいローラの気持ちは邪魔なものになってしまいます。

今のままでは、ゆめとローラは仲良しすぎるんですよね。

だからローラは、ゆめとの現状の関係を壊さなければならなかったんです。

近すぎる自分たちの距離を、無理やりにでも引き離そうとしたのです。

いずれ来る、ゆめがひめ先輩とユニットを組むその日までに。

 

ローラはゆめのことが好きだからこそ、ゆめがひめ先輩と心置きなくユニットを組めるよう自分の気持ちは一切伝えずそして、ゆめに嫌われるために喧嘩までする必要があったんですね

 

 

ああ、なんという、ローラのゆめに対する感情まるで恋愛ドラマの構図ですね

憧れの先輩とくっつくチャンスを与えるため、わざと嫌われるように喧嘩する健気な親友ポジションの娘青春恋愛じゃないですかこれは

 

 

余談

以上のことを踏まえてその先の仲直りシーンを見ると、ローラの台詞一言一言が違う意味に聞こえてきます。

 

このシーンでゆめとローラはお互いの気持ちを告白し合いながら、「ユニットを組む相手が本当に自分で良いの?」と確認し合います。

 

ゆめからローラに対しての「自分で良いの?」の意味は、わかりやすいですね。

「(実力のある真昼ではなく)自分で良いの?」です。

ローラが言ったことを気にしてたんですね。

 

ではローラからゆめに対しての「自分で良いの?」はどうでしょう。

「(散々嫌われるような言動を取った)私で良いの?」と解釈するのが普通ですが、ローラの感情を色々分析した今、もう一つの意味もあったのではないかと推測します。

それは、「(ひめ先輩ではなく)私で良いの?」という意味です。

 

この台詞の真意は、ゆめには伝わっていません。

事情を説明していないので当たり前です。

 

しかしローラの中にはずっと、ゆめにとって一緒にいるべき相手は自分ではなく、大好きなひめ先輩だ、だから自分は身を引くべきだという葛藤がありました。

 

そのためにゆめにわざと嫌われたくらいです。絶対に吐露出来ない本心です。

 

それは絶対に「言わない方がいいこと」だけれども、この「私でいいの?」という問いかけには、その真意がいくらか含められてたのではないかと、解釈します

 

 

 

長々と書きましたが、

以上になります。

 

ローラのゆめへのラブ、凄まじいですね

「ゆめとユニットを組みたい」

その一言を言うために、次世代S4へのチャンスも、ゆめが大好きなひめ先輩と組むチャンスも、全部ぶっちぎったんですよねもう、凄まじい愛です

 

あー好き、劇場版アイカツスターズ!本当好き……

 

6回目観に行こう