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【アイカツスターズ!】ふたりの夢が重なるまで 〜第72話 感想・考察〜

アイカツスターズ!第72話の感想・考察記事になります。

 

アイカツスターズ!第72話、本当に素晴らしい回でした……

虹野ゆめと七倉小春。半年以上に及んだお別れ期間を経て、再び道を共にした幼馴染のふたり。小春がゆめのブランド ベリーパルフェにデザイナーとして携わるまでを描いたお話として、これ以上ないほど上質なものが示されたように思います。

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今回、私が心から凄いなと思ったのは、小春がゆめの夢に介入することの困難を、真摯に描ききっていたこと。そしてその困難に対する回答が大変見事だったことです。小春には、ゆめちゃんの夢に介入することへの恐れの自覚、およびそれを乗り越えるまでの物語が。そしてゆめには、彼女の成長・心根の強さを表す描写が用意されていました。この記事ではそんな第72話から得た感動を、感想考察賞賛交えながら語っていきます。

 

七倉小春が向き合ったもの

第72話ではまず、小春がゆめちゃんの夢に介入することへの恐れや不安を、彼女自身に認識させる流れがしっかり作られていました。

第72話冒頭にて、小春はゆめちゃんの力になることに胸をときめかせています。自身がベリーパルフェのデザインに携わることで、ゆめちゃんは絶対喜ぶに違いないと、信じて疑っておりませんでした。

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しかし、立派に成長したゆめちゃんの姿を目の当たりにし、想いを告げることに躊躇しだします。ゆめちゃんはとても立派に成長した、私がお手伝いする必要なんてないんじゃないか。ゆめちゃんは一人で夢を叶えたいんじゃないか、手伝うなんて言ったらかえって迷惑なんじゃないか、と。

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他者の問題というものはとてもデリケートです。下手に介入すれば相手の成長や自立を奪ってしまったり、相手のやり遂げたいという気持ちの妨げになりかねないものです。ここでは小春にそういった不安を自覚させる流れが、確かに映されていました。

 

第25代目S4の皆さんがサプライズパーティの準備を手伝おうとしたシーンにて、小春が猛反対していたのが印象的でしたね。ここでは、「サプライズパーティ企画という、ゆめちゃん自身がやり遂げようとしている課題に介入しようとしている第25代S4の皆さん」と、「ドレスデザインの実力向上という、ゆめちゃん自身がやり遂げようとしている課題に介入しようとしている自分」が重なっています。

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引っ込み思案だった小春が、尊敬している先代S4の皆さん相手に意見したのには驚きました。これはきっと、自分自身に言い聞かせる言葉でもあったのでしょう。

 

虹野ゆめの課題

また、第72話の中では、ゆめが持っている課題についても再度描写してくれました。ゆめの背負っている課題、それは第59話より与えられた、ドレスデザインの実力が不足しているというものです。これについてゆめは、真摯に向き合い努力を重ねていました。

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私はこの第72話を見るまで、小春がゆめのブランドの携わる展開について、一つの不安を覚えていました。もしここでデザインの実力を持った小春が手助けをしたら、ゆめの努力が蔑ろになったり、成長の機会が奪われたりはしないか?そんなことを気にしていました。この課題に小春を介入させるのは、一歩間違えればモヤッとした印象に繋がりかねないのではないか?そんなことを、少しばかり不安に思っていました。

 

以上の2点、小春の葛藤とゆめの課題が、第72話の前半にて示された問題です。その示し方の繊細さ、丁寧さに胸を打たれます。そして第72話では、これらに対する解決を、完璧な形で描きあげておりました。本当に凄い。次の項目から、その解決方法がいかなるものだったかを語っていきます。

 

ゆめのポテンシャル

小春からドレスデザインの手伝いの申し出を受けたとき、ゆめがどのような受け止め方をするか?これは一歩間違えれば彼女の印象を悪くしてしまいかねない問題でした。

その解決は、第72話の中で、「サプライズパーティの準備」を通して示されていました。先代S4の皆さんに自分の力を見てほしいと、絶対一人で成し遂げてみせると意気込んでいたサプライズパーティの企画。これを急な仕事によって成し遂げられなくなったゆめですが、その姿は落ち込むどころか凛としていて、仕事をしっかりやり遂げた自身の行動を肯定できていました。

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サプライズパーティの企画を成し遂げられなくとも、一切目を曇らせなかった彼女の姿。その姿からは、逆境においても芯のブレない彼女の強い心根を感じられました。


今回は小春や先代S4の皆さんが手伝ってくれたことで無事開催できました。しかしもし仮に、誰の助けも借りられずパーティの開催を果たせなかったとしても。その無事開催できなかったところから、ゆめなら何かを成し遂げられたのではないか。どのような状況からでも、彼女は最終的に「みんなを笑顔にする」という一番の目的を達成していたのではないか。そんな確かさを感じました。

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さて、これが前の項で語った、ゆめの課題への解に繋がります。デザインの実力不足という課題に他者が介入することで、ゆめの成長の妨げに繋がってしまわないか?その答えは簡単、「ゆめちゃんはそんな子じゃない」です。ひめ先輩も言っていました。これは完璧なアンサーです。

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サプライズパーティの準備に間に合わなくとも凹たれずにどっしり構えていた様子、彼女のそんな強くて優しい、建設的な思考は、すべての物事において一番大事な目的を成せる答えを見つけるのではないか。そのように信じさせてくれる、ポテンシャルを感じました。

今回第72話にて、自身の目的を達成するための最善の行動を選べるゆめの才能を見せてくれたことで。もし仮に小春ちゃんから手伝いの申し出がなくても、今回サプライズパーティに間に合わなくとも正しい行動を取れていたように、彼女は自分自身が一番満足のいく方法によって、ベリーパルフェのドレスデザインと向き合っていただろう。そう思わずにはいられません。

 

小春の出した答え

次に、小春に与えられていた問題の話です。ゆめの夢に介入することで、彼女の迷惑になってしまうんじゃないかという、恐れや不安。それらと向き合った結果、最終的に彼女はゆめの夢に携わる道を選びます。小春はどのような答えを出したのか。自身の問題をどのように解決したのか。

 

今一度、第72話においての小春の感情の変遷を振り返ります。

最初、小春はゆめちゃんの役に立ちたいと思っていた。

だからドレスデザインの実力不足に悩むゆめちゃんをお手伝いしようと考えた。

しかし、ゆめちゃんは立派に成長していた。

デザインの実力不足も、きっと一人で乗り越えていけるように見えた。

ここまで考えて、小春は一度、ゆめのお手伝いをしようと提案するのをやめた。

 

ゆめちゃんは、本当に立派になりました。彼女は一人でもやっていけるだろうという、ポテンシャルがあることは話の中で示されていました。小春の手伝いが役に立つか立たないかと問われれば、それは大いに役に立つのでしょうが、必要性があるのかとまで問われれば、ないと言い切れます。

 

なぜ、手伝うことは必須ではないのに、ゆめちゃんの課題に踏み込むことの恐れも自覚したのに、小春はゆめのブランドに、ゆめの夢に携わることを決意したのか?

それは……

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「ゆめちゃんが好き」

ゆめちゃんのことが、大好きだから。これが全てなんですよね。これが、自身に与えられた問いに対して小春の出した答えです。自分は要らないかもしれない、迷惑かもしれない。それでも、ゆめちゃんが好きだからという己の感情一つで、この答えを選び取ったのです。結局は、大好きだからという気持ちで、ゆめちゃんの夢に携わる決断をしたのです。

第72話の中で、小春が介入しなくてもやっていけるゆめちゃんの強かさを描きながら。小春がゆめちゃんの夢に介入することの問題点や葛藤を描いきながら。最終的に小春がゆめちゃんの夢に介入することの決断を、小春の「ゆめちゃんが好き」という感情一つに落とし込んだのです。これがいかにすごいことか…

 

あなたは一人で生きていけるかもしれないけれど、あなたのことが好きだから、私はあなたと共にいたい。携わなければいけない理由はないけれど、好きだから一緒の夢を歩きたい。これはもう愛の告白ではないか……

虹野ゆめというトップアイドルの持つ夢は、もう生涯を捧げる生き方そのものと言っても過言ではありません。彼女の夢に携わるということは、彼女の一生に携わることでしょう。ゆめの夢の重みは、全ての視聴者より、作中人物の他の誰より、小春自身が一番知っていることです。幼少からずっとそばで見て来た、彼女しか知らないことです。

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ゆめの夢に、人生に介入する行為には、どれだけの勇気が必要だったことでしょう。私たちには計り知れない重み、私たちには計り知れない愛です。
その重みを知りならも、ゆめちゃんが好きだから、彼女の夢に携わりたいから、一緒の道を歩みたいと告白した。これはもう、プロポーズです。本当に尊い……

 

以下に、第72話ラストシーンの小春の告白の一文を載せます。

「あのね、私ね、私……ゆめちゃんが好き。」

「えっ?」

「大好き、とっても好き、いっぱい好き。だから……私もこの足で一歩を踏み出して、夢を掴むよ。夢に近づくよ。」

「ベリーパルフェのデザインをお手伝いしたい。一緒に歩きたい、ゆめちゃんのブランドを、星たちの空へと羽ばたかせる道!」

「全部私の言葉だよ!」

「行こう、一緒に。ずっとどこまでも……思いっきり羽ばたかせよう!2人のベリーパルフェのツバサ!」

「小春ちゃんと一緒に!」

「ゆめちゃんと一緒に!」

「2人の一番星に辿り着くまで!」

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アイカツスターズ!第72話、本当に魅力的な回でした。こんなに感動したのは昨年の劇場版アイカツスターズ!ぶりです。絵や展開による感動もさることながら、お話の問題定義からその解決までの流れの示し方が非常に美しく、感嘆の言葉しかありません。

小春をベリーパルフェのデザインに携わらせる際、ゆめの気高さを一切損なわない描き方をしていたこと。そして小春がゆめの夢に携わることの決断が、ゆめに対する大好きの気持ちにもとづいたものだったこと。涙が止まりません…… 

新キャラも登場するとのことでさらに盛り上がりつつあるアイカツスターズ!ですが、まずは七倉小春ちゃんが幸せになってくれたことに、この上ない満足感があります。ありがとうアイカツスターズ!、ありがとう、ゆめこは。Forever……

 

 

終わり