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【アイカツスターズ!】エルザ フォルテ パーフェクトへと至る道

 アイカツスターズ!2ndシーズンの感想・考察記事になります。

 

 2017年春からスタートしたアイカツスターズ!2ndシーズン。早いものでもう始まってから8ヶ月以上の月日が経ち、だいぶクライマックスの雰囲気が漂ってきました。星のツバサも全部そろって、太陽のドレスというすごいドレスも出現して。決勝トーナメントなる最後の舞台の影も見えつつあり、それぞれのアイドルが準備を整えている状況です。

 ゆめ達はS4としての貫禄をつけ始め、きららやレイといったヴィーナスアークの面々も自身のアイカツの道を見つけることができて。失敗したことや大変なこともあったけれど、今はほとんど全員が安定し、心満たされるアイカツの日々を送っています。

 そんな中、ひとり未だに不安定で。今にも崩れそうなくらい危うい空気を放っているキャラクターがおります。そうです、エルザ フォルテ。彼女です。

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 第86話「涙の数だけ」を見て以降、彼女のことを考えるだけでしんどい気持ちに包まれます。本記事ではそんなエルザの話を、アイカツスターズ!2ndシーズンを振り返りながら語っていこうと思います。彼女がどのようなキャラクターだったのか、彼女を見てなにを感じたか。そのようなことについて。

 

エルザの第一印象 

 先ず、エルザがどんな人だったのか、簡単におさらいしていきます。 

 エルザ フォルテ。第51話「パーフェクトアイドル エルザ」より登場した、豪華客船型アイドル学園「ヴィーナスアーク」のオーナー兼アイドル。すべての物事において完璧であることをモットーとしている、自他共に認めるパーフェクトアイドル。

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 完璧へのこだわりが強すぎるあまり弱者を顧みない言動が目立ち、初期は悪役のような印象のある人でした。「アイドル海賊」なんていう異名もついており、その強烈さからローラや真昼の反感を買うこともしばしば。

 しかし、そのような態度はあくまで誰よりも完璧なアイカツを追求したいという信念によるものであり。強烈ではあるけれど決して悪人ではなく、純粋に志の強い人という感じでした。自らを慕うものに対しては厳しくもあたたかみのある態度で接し、ヴィーナスアークでは多くの生徒達に尊敬されています。

 たまに酷いことも言うけど、アイカツに対する真摯な姿勢と確かな実力は心から尊敬できる人。ゆめ達とは決して仲良しこよしにはならず、気高いライバルのようなポジションで、時に競うようにアイカツを共にしておりました。

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 初登場時のセリフがこれ。いや本当に強烈な人でしたね。

 

エルザの根幹

 そんなエルザの精神の深いところが分かるのが、第78話「ようこそ パーフェクトマザー!」。エルザが完璧を追求する真の理由が、彼女の本質を見ることができた回です。 

 エルザには愛する母がおります。母の名は、ユキエ グレース フォルテ。母はエルザを、エルザは母をお互い家族として大切に想い合っており、二人はおおむね良好な関係にありました。

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 しかし母は多忙な人で、幼いエルザは寂しかったのか、より大きな愛情を求めるようになります。母ともっと一緒に過ごしたい、優しく抱きしめてもらいたい、そんな願望を抱きました。

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 そしてエルザは、その望みを叶えるための手段を考えました。母に抱きしめてもらうためには、もっと母に愛される自分にならなければならない。母はパーフェクトなひとだったから、きっとパーフェクトなものが好きに違いない。だから私がパーフェクトになった日には、私をもっと好きになってくれる。そうすればきっと、私を抱きしめてくれると。

 こうしてエルザは幼い頃に、完璧であることを志すようになりました。そう、エルザが完璧を追求する真の目的、それは「愛する母に抱きしめてもらいたいから」。母に対する思慕が、幼き日にいだいた志が、現在のエルザの根幹になっているのですね。

 

 この回まで、エルザはただ純粋に完璧な立ち居振る舞いそのものに喜び、パーフェクトアイドルの地位に立つことで心満たされているように見えていました。だから、本当に驚きです。

 実は、彼女にとって完璧であることは目的を叶えるための手段でしかなくて、しかもその目的は母から愛されたいという子供らしい欲求だったと。エルザの本質がわかる、エルザの見方が変わる非常に印象深い回でした。

 

エルザと母の切ないすれ違い

 さてここで一つ、エルザに対してしんどい気持ちが湧いてきます。エルザは母に抱きしめてもらいたいという目的を叶えるべく、パーフェクトになるという手段を選びとりました。しかし実際のところ、母はエルザのことを最初から深く愛していました。なのでエルザが完璧にならずとも、言えばきっと母は抱きしめてくれました。つまりエルザは、夢叶えるためなら完璧にならずとも良かったのです。

 いや、それどころか。完璧を目指すという手段を選んだからこそ、かえって抱きしめてもらいにくくなった節すらありました。それを感じられるのが、第78話におけるエルザと母ユキエの会話シーン。

「この後、”ゲストの皆様のため”に、私がステージを披露します」

「ええ、私も楽しみよ。」

(子供のように笑うエルザ)

「それでは、また後ほど」

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 このやり取りの直後に、母は急な用事が入ってしまい、エルザのステージを見ることなく会場を後にしてしまうのです。エルザが本当は誰に見てもらいたかったのか、エルザの表情から容易に読み取れたため、とても切ない気持ちにさせられるシーンでした。

 きっと、母はエルザの言葉に安心したのだと思います。ゲストのために、みんなのためにステージを見せると言う、娘のパーフェクトな言葉に。大人になった、立派になった姿を見て、きっとエルザは一人でもやり遂げるだろうと思い、会場から離れたのでしょう。

 この一連の描写が、エルザが完璧に振舞おうとしたからこそ母が離れていったという構図になっていて、なんとも悲しい。完璧を目指すということは、立派な大人へとなるということで。母に抱きしめてもらいたいというのは、すこし子供っぽい欲求で。エルザが完璧を実行すればするほど、母の抱擁は遠ざかっていくのです。切ないね。

 そして、母が離れれば離れるほど、エルザは「まだ自分が完璧じゃなかったから」と自身のパフォーマンスを顧みます、より完璧なものへと洗練させます。そして、また一つパーフェクトなレディーへと成長し、また一つ母を安心させて、また、一つ……

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だんだんと間違えるエルザ

 母に抱きしめてもらうという目的を叶えるために、完璧を目指すという手段を選んだエルザ。遠い抱擁を得るために、何年も何年も完璧へと至る努力をひた向きに続けていきました。そして彼女はだんだんと、道を間違えていくことになります。

 

 アイカツスターズ!2シーズンでは、キーアイテムとして「太陽のドレス」なる伝説のドレスが登場します。太陽のドレスとは、作中においてパーフェクトなアイドルのみが手に入れられるという、とにかくすごいドレスです。

 これはエルザにとってパーフェクトの象徴とも言えるもので、なんとしても手に入れたいと強く願っていました。物語の中で、エルザがこの太陽のドレスとの距離が近づいたあたりから、彼女の瞳は曇っていきます。

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 上の項でも述べましたが、エルザは自らを慕う者たちとは暖かみのあるコミュニケーションをとっていました。そこが彼女の良いところ、魅力的なところでもあったのですが。目を曇らせたエルザは、まずそこから変わっていきます。

 

 かつてのエルザは、特に花園きららに対して特別優しく接しているように見えました。きららは特別エルザのことが大好きだと慕っていて、エルザを喜ばせたいという一心でアイカツに励んでいると豪語する子です。

 エルザ自身、母に愛されたいために完璧を志す努力をしている人間だから。誰かへの大好きで頑張るきららの気持ちが良くわかったのかもしれません。きららには特別優しく、時にあたたかい抱擁を与えていました。

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 こういうところでエルザの繊細さが感じられて、好ましかったですね。

 しかし太陽のドレスの件で、エルザは自分のことでいっぱいいっぱいになり、きららに優しくできなくなっていきました。エルザが急に冷たくなったように感じたきららは、ひどく傷つきます。このようにエルザは、かつて出来ていた繊細な心遣いを忘れるようになってしまいました。

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 これがまた、悲しい話ですね。エルザの母は、エルザが完璧であろうとなかろうと大切に思っていました。しかし、このように自分を慕う身近なものまで思いやれない子にエルザがなってしまうのは、きっと嬉しくなかったと思います。

 エルザは母に愛されたいと願って完璧を志したのに、その完璧の象徴を手に入れる過程で、母に喜ばれない人間になってしまったのは、酷く悲しいことです。

 

 

至ってしまった太陽のドレス

 何かを間違えたまま、そのままエルザは念願の太陽のドレスを手に入れます。夢が叶ってエルザ本人は大歓喜。しかし見ているこちらはジリジリと、悪い予感が止まりません。

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 エルザが太陽のドレスを手に入れた、第86話「涙の数だけ」のステージ。太陽のドレスをまとうエルザのパフォーマンスは鳥肌が立つほど美しかったけれど、どこか物悲しさがありました。まさに太陽のごとき眩い魅力があったけれど、他のアイドル達のステージを全て呑み込むような、エルザ本人すらも惑わすような、底知れない怖さがありました。

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 無意識に思い返すのは、第78話での母ユキエの言葉です。

「まぶしい世界にいると、時々見えなくなってしまうでしょう?」

「はじめに目指したはずの、理想や夢。星の輝きが。」

「本日は特別にお願いして、少しの時間だけ。本当の闇をご用意しました。」

「自分の夢や、理想の星を、もう一度、ゆっくりと思い出してくださいね。」

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 周囲の光をひと時消すことで、隠れていた数多の星の輝きを見せた母ユキエ。強大な太陽のドレスの輝きで、他のアイドルたちの光を丸呑みにしようとしたエルザ。

 誰か一番の輝きよりも、一つ一つの個性豊かな煌めきの美しさを大切にする母ユキエ。自分が一番に輝くことしか考えられず、周囲への思いやりを忘れたエルザ。エルザがさらに母とのすれ違いを深めたように思えて、また悲しくなります。

 

ひどく悲しいこと

 もともと、エルザの目的は母から抱きしめられることで、太陽のドレスそのものではなかったはずです。太陽のドレスはあくまで完璧な自分に至るための手段でした。しかし有頂天な今のエルザはまるで、もう目的が達成されたかのような様子。目的と手段を履き違えてしまいました。

 母は、完璧じゃなくてもエルザを愛しています。最初から完璧じゃなくても良かったのです。しかしエルザは幼い思い違いから、完璧を志して。その過程で道を誤り、母に望まれない変化を遂げてしまいました。

 エルザはこれからきっと、この事実と嫌でも直面することになります。信じて突き進んできたパーフェクトになるという道が、母の愛へと至るには正しくない道だと悟った時。彼女はどれだけ大きな絶望を味わってしまうのでしょうか。

 

 考えるだけで胸が痛くなります。そうなった時のエルザのことを想像すると、可哀想で仕方ない。

 エルザが完璧になりたいと願ったのは、母の愛する自分になりたかったから。母を喜ばせたかったからだという、善性の感情が元になっていました。そしてそれに当たって選択したのが、完璧に、立派になるという善い行動です。そのような気高く清らかな人格を持っていた幼いエルザが、こんなにも惨い、大きな悲しみに至ってしまうのはあんまりです。

 母に愛されたいからといって問題行動を起こしたりすることもなく、ひたすら立派に努力した幼子にこのような仕打ちが待ち受けているのは、ひどく残酷なことです。しんどいね……

 

孤独なエルザ

 そしてさらに、なにより一番悲しいのは。エルザが随分と孤独であるということです。エルザが真に求めているのは母の愛情なのですが、そのことをあの世界の誰もが知らないのです。知っているのは視聴者だけ。あの世界の人たちは皆々、エルザはただただパーフェクトなアイカツに心満たされているのだと認識しています。

 折れそうなくらい大きな悲しさを味わった時、慰めてもらったり、寄りかかったりしながら、どうにか人は立ち直ります。しかし今のエルザはそれが叶いません。完璧であり続けるために、誰にも幼い本心を漏らすことはなかったから。

 悲しみを誰にも理解してもらえないのは、とても辛い。エルザはこれから折れることになっても、そこから一人で立ち向かわなければならないのです。一人っきりで戦わなければならない。 心苦しいですね……

 

 どうにかならないのでしょうか。一人だけ、エルザを一番側で見ていた騎咲レイだけは、悲しい方向へと歩を進めているエルザに気づいてる様子でした。どうにか彼女が助けてあげる流れにならないものでしょうか。エルザに寄り添える可能性を持っているのは、もうレイだけしかいないような気がします。

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パーフェクトアイドル エルザ 

 これからエルザは、きっと傷つくことになります。それはもう当人以外には計り知れない、辛い絶望なのだろうと思います。そのような展開が約束されているのかもしれないません。ですが私は、どうにかエルザに、それを乗り越えていってほしいなと思いました。

 

 エルザが目指したパーフェクトとは母の愛を受け取る手段に過ぎず、間違いだらけではあったけれど。それでもエルザのパーフェクトであろうとする立ち居振る舞いは、確かな素晴らしいものが宿っていました。そうだったからこそ、それに惹かれてエルザの元へと多くの生徒が集ったのです。

 エルザがいなかったら小春はゆめと共にブランドを立ち上げることもなかった。エルザを大好きにならなければ、きららは今の満たされたアイカツに至れなかった。エルザに尽くす喜びを知ることがなければ、レイは退屈で情熱のない人生を送っていた。エルザはたくさんのアイドルに、世界中の人々に、価値あるものを振りまいていました。

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 エルザはこれから悲しみに至った時、自分の人生は間違いだらけだったと思ってしまうかもしれない。だけどその間違った道のなかでも、正しくて豊かなものを与えてまわっていたのです。虚像を追いかけた道のりの中で、育んだものは本物だったのです。

 

 完璧であることはエルザの人生に良くない影響も与えたし、完璧を目指しさえしなければ、彼女はもっと心満たす道を歩めたかもしれない。それは真実だと思います。

 しかし彼女が完璧を目指そうとしたきっかけは善い心根だったし、選んだ行動は立派で正しかったし、完璧であろうと信念を貫く彼女は美しく格好良かった。それもまた真実なのです。

 

 ここでアイカツスターズ!2ndシーズン後期OP「MUSIC of DREAM!!!」の2番以降の歌詞を聴くと、深く心に沁みます。少し未来のエルザはこうであってほしい。いつか、完璧になると約束した幼き日の自分に、胸を張れるようにエルザらしくあってほしい。信じた道を歩んでいってほしい。

 

 間違いは間違い。正しいものは正しい。それらを分別した上で、彼女には真のパーフェクトアイドルに至ってくれればいいなと、切実に思います。彼女自身が満たされる答えを見つけたその先で、愛する母に抱きしめてもらえるといいですね。頑張れ、エルザ フォルテ。

 

 

終わり